ヤマケイオンラインの上記の記事がYahoo!でも配信されていた。それだけ反響がある内容なのだろう。この記事について思うところを書いてみる。



一方的SNSコミュニティ批判

記事の概要としては、登山を再開しようとする質問者が、登山SNSコミュニティ内で「無謀」と思われる登山が称賛されている場を目撃し、自分の知る「昔の登山」とは違う状況に困惑していると述べ、それに対して山岳ガイドの山田哲哉氏が答えている。

回答としては「これらの記録は幸運にもうまくいった記録」「登山の常識なんて無くなったに等しい」「失敗談は登山記録には出てこないのではないでしょうか」「無茶な登山の報告を称賛し合う」ことは「コミュニティサイトの負の一面」と仰っており、結論として「冷静な目で判断」するようにと締めくくっている。

これに対して、以前ヤマレコ代表、的場氏が反応をされていた。

ここの登山SNSコミュニティはどうやらヤマレコのようで、槍玉に挙げられたことに対して、ヤマレコには失敗談や遭難報告もあると反論している。先程の山田ガイドはおそらく推測で「事故報告は登山報告として出てこないのでは?」と言っており、ここは間違いということになる。

ヤマケイオンラインの記事はSNSコミュニティの負の側面を一方的に断罪するような風潮で、昔の古き良き山岳会を賛美する内容に見て取れる。実際にどれだけSNSコミュニティが原因で遭難事例が増えた等の因果関係が明らかでないのならば、安易にSNSコミュニティを断罪することはあまり良いこととは言えない。むしろヤマレコによって安全登山は推進されているので良い影響のほうが遥かに大きい。



SNSにある遭難記録が認知されていない問題

これでは「スゴい」登山記録を書く人が称賛の同意を求めているのに対して、ヤマケイオンラインはSNS批判の同意を求めているに過ぎず、両者のやっていることは承認欲求を満たすだけで同じことだ。

ヤマケイオンラインはこのような記事を書くなら、論拠となる定量的なデータ等を示して書くべきだろう。そして同時に対策を提示すべきだ。

と同時に、ヤマレコが悪いわけではないが、このような主観的な記事を書かれるということは、誤解を受けている可能性があるので、そこを解消する動きをしてもいいのではないか、とも思う。

事実として、ヤマレコには失敗談や遭難報告もあるのにもかかわらず、この「質問者」や山田ガイドは「認知」できていなかったと言える。正直、僕もヤマレコはほとんど投稿してないし、最近は見ることもめっきりなくなった。インターネットは便利なもので、自分の手に入れたい情報はすぐ手に入る。しかし、それ以外の情報は見えにくい。つまり、主体的に「遭難事例を探そう」という意識が無いと遭難報告はネット上で見つかりにくい。



身近な人の遭難事例のインパクト

ヤマケイオンラインの記事内にセーフティネット的な意味合いで山岳会が登場したが、団体に入っていると過去の遭難事故事例を必ず閲覧するということがある。しかもそれは自分の先輩にあたる身近な人の死亡例なのだ。

そのような事故事例はインパクトが強い。ましてや登山を始めたばかりの頃に聞くのだから恐ろしくなる。ネットで流れてくる遭難ニュースはどれも無謀で片付けられるものが多い。だいたいの人は「遭難するべくして遭難したな」「自分はこんなバカはやらない」で済ますだろう。そもそもその人のことを全然知らないし、全体の情報量が少ない。しかし身近な人の遭難事例というものは、「あの人がなんで?」と思うことが多い。また、情報量も桁違いなだけに、綿密に計画を立てて一見問題なさそうに見えることもある。

そうやって事故の記録を読み取っていくとたまたま「疲労が溜まっていた」「ちょっとした油断」ということが原因だということがある。こうなると明日は我が身なのだ。ここで出来る対策はいかに安全係数を多く取るかである。そうなると弾丸日帰り登山や深夜発はリスクの大きさを理解できるし、自分の体力ギリギリに挑むようなこともしなくなる。安全を見て全体力の6掛くらいで登山をしないと怖くなるのだ。

それだけ生の遭難事例は大事だという点はおそらくヤマレコ側も記事内のお二人も認識しているはず。しかし記事内のお二人はヤマレコで事故事例を見つけられなかった。これは見せ方に一定の問題があると言えなくもない。もったいないことだ。



たとえば、事故記録のサジェスト機能

たとえばヤマレコにしろ何にしろ、「事故報告」を上げた人には最高のインセンティブを与えたりすることで報告件数そのものを増やせるかもしれない。また、わずかな事故報告を「おすすめ記事」として同じ山域の記録を見ている人にサジェストするのもいいだろう。いわゆるスゴい記録の下に「同じ山域のでの事故事例」がサジェストされていたら山田ガイドも、SNSコミュニティにも事故報告があるんだということに気がついたかもしれない。

そこまでやったうえで無謀登山の称賛が鳴り止まないならもうそれは個人の自由だろう。個人の主義主張は否定するつもりは無いが、お互いの主張がインターネットを通じて見えてないなかで議論するのは不毛なのでなるべく可視化できるようにする努力は必要なのかなと思う。



おわり
2020年9月20日

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