富士登山に必要なモノ、知識ってなんでしょうか?富士山は標高も知名度も日本一ですが、登るときのお約束や方法って何がベストなのでしょうか?服装、高山病、弾丸登山…など、色々噂はありますが、その実態とは?僕の経験をもとにご紹介します。



「富士山登山」は「登山」の範疇を超えた、別のアクティビティ!


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富士スバルライン五合目(吉田ルート)からの見上げる富士山頂

人に「登山が趣味です」というとほぼ必ず「じゃあ富士山登ったことあるの?」という質問が返ってきます。登山の玄人っぽく、「いや富士山は登山対象としては面白くないんですわ」なんて答えてしまうと、そういう人に限って富士山を登っていたりするので、妙な敗北感を覚えることが、僕にはかつてありました。

富士山は不思議な山で、登山を趣味としていない人でも、「日本で一番の頂に立ちたい!」という思いを持つ人が多く、登山者は後を絶ちません。もちろんその富士登山をきっかけに登山に本格的にハマっていく人もいるでしょう。しかし多くの場合、富士山に登る人=登山が好きな人とは限らないのです。

もはや富士山はその存在だけでブランド化しており、「山に登りたいから富士山に登る」のではなく、「富士山に登りたいから富士山に登る」というように、登山の範疇を超えた独自のカテゴリーに属するレジャー活動なのです。例えるなら富士山はマチュピチュ遺跡みたいなもので、「日本一高い場所にある観光地」なのです。それでもやっぱり富士山も山なので、冒頭のような「富士山登ったことあるの?」という質問が来てしまうのは避けられないことなのです。

「富士山くらい登ったことありますよ」とドヤ顔で答えるためにも、登山を始めようとする人もそうでない人も、「富士山サミッター」の称号は早めに取得しておくことをおすすめします。



僕の持つ富士山のイメージ


富士山に登る前の富士山のイメージ(いや、登った後も同じです)は…
  • 人がひたすら多い
  • 植生が貧しい
  • 砂山
という登山をやっている人間からするとかなりマイナスなものが多かったのです。特に、登山が好きな人の多くは「都会の喧騒から逃れて自然を満喫する」みたいな気持ちを持ってますので、そういう人からすると富士山の人の多さはゾッとするものでしょう。あと自然を満喫するなら植生が豊かな山に登った方が美しい景色に出合えたりもします。もちろん富士山も樹海があったり、5合目から上も独特の植生を持ってますが、アルプスと比べたら植生は貧相です。



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とは言え、六号目までは木や緑もあり、おもしろいです。吉田ルートからだと、六合目からは小屋が多く連なっていきます。



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6号目から先は荒涼とした異星のような風景が広がります。遮るものがないので、雨が降ったら地獄です。



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最高峰、剣ヶ峰

それでもただ一つ、唯一無二の魅力は標高3,776m、日本一の高さの山岳ということです。これはやはり登っておかねばなりません…。

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日本一の高さからのご来光。これも拝んでおきたいですね。



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朝日を受ける最高峰剣ヶ峰。



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かっちょいい偽ピーク

富士山はやっぱり素晴らしい。観光地としても、山としても。僕は意を決して富士登山に向かうことにしました。

そこで、前述した三つのマイナスイメージを回避するために僕は以下のことを「富士山登山の心得」としました。



心得①:ハイシーズンに富士山には行くな


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たくさんの人で賑わう富士スバルライン5合目(吉田ルート)

富士山に登る計画を立てるなら、ハイシーズンを避けて計画を立てるのが賢明です。ここでいうハイシーズンとは7月~8月です。特に7月の海の日三連休、8月の山の日近辺のお盆休みは激混みですので止めた方がいいです。行列の中の登山は自分のペースで歩けず、余計に体力を使います。周りの人も高山病でバッタバッタ倒れているらしいですし、それを見ているだけでも気が滅入ります。

おすすめの時期は9月です。出来れば平日、平日が無理なら土日です。しかし9月に入るとパタッと休業してしまう山小屋が多いので事前にやっている山小屋をチェックし、思い立ったら予約しておきましょう。2018年はだいたいの山小屋は9月10日(月曜)までの営業のようです。ネットで2月くらいから予約を開始している山小屋が多いのですぐに予約するのが吉です。小屋やルートについては後述します。

しかし9月にもなると富士山は結構冷え込みますので、防寒対策は念入りに行いたいものです。防寒対策は後述します。



心得②弾丸登山は絶対やめて、8合目で1泊せよ


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小屋に泊まることで余裕のあるスケジュールとなり高山病のリスクを避ける

最近は「富士山弾丸登山ツアー」というものも少なくなってきたのでしょうか。夜中に5合目について、夜通し6時間ほどかけて登り続け、ご来光(朝日)を山頂で拝んで、下山するというのが弾丸登山です。

これは明らかに寝不足により高山病のリスクが高まります。高山病は症状によってはすぐに命にかかわる状態になることもあります。山に慣れている人も寝不足や疲労が溜まると高山病にすぐなるんです。僕もたいして高くない山で、疲労から高山病の一種である肺水腫になりかけたことがあるので、その恐ろしさは身をもって知っています。せっかくなんで昼間と朝の富士山を楽しんだ方が絶対お得です。

僕が行った時も同行者の一人が夜中まで深酒をしており、深夜2時くらいにゲロを吐いてまして、翌日の登山の際には頭が痛いとわめいており、具合悪そうでしたね(笑)。これは絶対にマネをしてはいけません!

スケジュールとしては、

1日目:9時くらいに5合目から登山開始→4時間ほどかけて8合目に到着→8合目の小屋で一泊
2日目:朝早く山頂に向かい、頂上でご来光→下山


がおすすめです。



心得③:時期を決めたらルートを選定し山小屋を予約せよ



スケジュールが決まったら、ルート選定ですが、富士山には大きく4つルートがあり、
  • 吉田ルート(富士スバルライン五合目 2,305mからスタート)
  • 富士宮ルート(富士宮口五合目 2,380mからスタート)
  • 須走ルート(須走口五合目 1,970mからスタート)
  • 御殿場ルート(御殿場口新五合目 1,440mからスタート)

山小屋の数で言うと
  • 吉田ルート(20)
  • 富士宮ルート(9)
  • 須走ルート(12)
  • 御殿場ルート(4)
となっており、圧倒的な山小屋数を誇る吉田ルートがおすすめです。9月になってやっている山小屋が最も多いのも吉田ルートでしょう。

吉田ルートは山梨県側の富士スバルライン5合目というところから登ります。登り始めの標高も2,305mと他のルートと比べて高く、だいぶ楽ができ、これもかなりのアドバンテージになります。

まずはこの富士吉田ルート状の8合目、7合目あたりの山小屋の予約状況を見てみることをお勧めします。


心得④:服装・持ち物は「動きやすい格好」+「防寒着」

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ズボンは高校時代のジャージもあり

スケジュールが決まったら気になる服装・持ち物ですが、基本的には服装は運動が出来る服装と防寒着です。登山用品店なんかに行くと本格的な登山装備をお勧めされますが、富士山一度しか登らないのであれば、下記を参考にしてください。

服装は…

  • 半そでTシャツ(ドライ素材)、
  • 長ズボン(ドライ素材)もしくはジャージ
  • 防寒着①:フリース
  • 防寒着②:ダウンジャケット

で問題ないと思います。ダウンジャケットは大げさに思われるかもしれませんが、9月に富士山に登るなら必要です。気温は0度近くになりますし、最悪の場合雪が降ることもあります。


一方、日が出ている日中は半そででも良いでしょう。汗冷えしにくい化繊のものを選びます。半ズボンにタイツを履いている格好を山っぽいと思う人もいるかもしれませんが、素材を間違えると寒いだけなので長ズボンがおすすめです。

ちなみにジーパン、ジーンズだけは絶体NGです。濡れると乾きにくく、重くなり野外の運動にはもっとも適しません。とにかく動きやすくて乾きやすい服がいいです。

雨具(カッパ)は要るのか

必ず持っていけと言われる雨具(カッパ・レインウェア)ですが、僕は天気予報が良さそうなら折りたたみ傘でも構わないと思っています。

しかしひとたび風が吹くと傘は役立たずになるので、カッパが必要になります。その場合はまず、100均のビニールカッパはやめましょう。全身蒸れて雨に濡れる以上に身体が濡れます。

最低でも通気穴(ベンチレーション)があるものか、奮発できるなら「防水透湿素材」のものにしましょう。「防水透湿」とは外からの水濡れを防いで、内部の湿気は外に通すというものです。代表的な素材に「ゴアテックス」というものがありますが、めちゃくちゃ値段が高いので、一度きりの富士登山のためにこれを買うのはバカらしいかもしれません。


以下、下に行くにつれて高性能雨具となります。

これはホームセンターレベルの雨具





これは登山用品店で「富士登山におすすめ」と書いてある雨具です。メーカーが独自開発した防水透湿素材使用しています。





これはゴアテックスという半ば神格化された防水透湿素材を使用した雨具です。確かに性能はいいですが、ブランド品みたいなものです。

靴は…

登山靴が望ましいですが、底がしっかりしたスニーカー(ナイキ)や、ランニングシューズでも全然構わないと思っています。むしろランニングシューズはおすすめです。履きなれて歩きやすい靴が一番です。

しかし9月に登るとなると天気が悪化すれば雪も降る可能性もあるので、悪天の中でも計画を決行するのであれば、防水性のある登山用の登山靴を用意したほうが、足を凍傷等のリスクから守れて安全です。

持ち物は

  • 容量が20リットルくらいのザック(リュックサック)
  • 折りたたみ傘もしくは雨具
  • 帽子、
  • 汗ふきタオル、
  • 1リットルの飲料水、お菓子等、
  • ヘッドライト、
  • 予備電池、
  • 予備の靴下、
  • 45リットルのゴミ袋

ヘッドライトは頭につけるタイプのライトです。富士山も多少は岩場があり、手を使って登るシーン少なからずあります。なので手持ちの懐中電灯はやめましょう。手持ちの懐中電灯は落としたら終わりですので

予備の靴下は靴下が濡れたときの替えです。靴が防水でないならあったほうがいいです。


45リットルのゴミ袋は、雨が降った時のザックカバーの代わりに使えます。その他にもゴミを入れたり、荷物を仕分けできたりと、色々使えるので持っていくと損は無いはずです。

酸素

よく高山病対策で用いられる酸素の缶ですが、酸素は持続的に吸い続けないと効果が無いので、缶の酸素は中身が空になったら終わりです。

最近では「食べる酸素」というものがあり、食べると身体が酸素を血中に取り込みやすくなります。前日から食べておくと効果が高まるそうです。かさばらないのでお守り代わりに持っていくのも良いかもしれません。






ほかにも使うものは持ってくべきですが、山の中で必要なのは上に挙げたもののみです。余計なものは荷物の重量を増すだけで体力の消耗に繋がるので持っていくのは控えましょう。


心得⑤:山小屋泊が不安なら寝床の対策をせよ

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斜面にへばりつくように小屋が点在している

富士山の山小屋は屋根があるだけ有り難いと思って泊まりましょう。山小屋はホテルや旅館とも違います。有人の避難小屋みたいなものです。トイレは非水洗、風呂もありません。出てくる夕飯もだいたいカレーライスのみです。寝床もシート敷いて簡易的な寝袋で雑魚寝です。しかも隣にイビキのうるさいおっさんがいるかもしれません。

イビキ対策には耳栓のご用意をおすすめします。また、富士山の山小屋のシュラフが衛生的に気になる人には「インナーシュラフ」というものがあります。

インナーシュラフとは、寝袋の中に入れて使う薄い寝袋のことで、自分の体と寝袋との直接の接触を避けることができます。




ちなみに、貸出しされる寝袋や布団は当然色々な人が使っており、しかも風呂に入らずその日着ていた服のまま寝る人も多いでしょう。富士山では洗濯なんて出来ないので日光消毒しているだけです。気になる人は気になると思います。


心得⑥:早出早着はマナーと思え

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朝の富士山を楽しもう。

富士山に限らず、登山においては早く出て早く着くというのが行動原則です。気候は別として、山で最も警戒すべきは「夜」です。



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山の夜は真っ暗闇となり、いくらライトがあっても道迷いのリスクは高まります。また、気温も昼間と比べてぐっと下がります。昼間は半袖でいられても、夜はダウンを着ないと寒いなんててうのは標高の高い山ではよくあることです。それほど夜間の行動はリスキーなのです。

ですので、早めに明るいうちに目的地に着くというのが基本です。そのためには早く出発しましょうということです。

到着が遅いと小屋の人も心配しますし、そのような周りに迷惑をかける行為はマナー違反と言っても過言ではありません。

ガイドマップに書いてあるコースタイム(所要時間から逆算して)山小屋に15時前後には到着できるように、登山口を出発しましょう。

また、山小屋では就寝時間(消灯時間)があります。小屋によって違いますが、だいたい20時までには寝て、朝4時くらいに起きましょう。山小屋は個室ではないので寝ている人がいたら騒がないのがルールです。

これも全ては早出早着の原則に基づいています。時間に余裕を持った登山が安全性を高めるのです。



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下りは下り専用のブルドーザー道があるのでサクサク下山できます。砂が多いので登りには適しませんが下りには最適です。



心得⑦:最高峰の剣ヶ峰まで行くべし

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日本最高峰富士山剣ヶ峰と書いた石柱があるところが最高地点です。

吉田ルートから上った場合、頂上まで着いたらそこが一番高いところではありません。せっかく頂上まで登ったのに最高地点に行ってないのはもったいないです。

実は富士山は富士山は火口に沿って山頂がいくつかあり、一番高いところが「剣ヶ峰(けんがみね)」です。火口の道を歩いて剣ヶ峰まで行きましょう。これを「お鉢巡り(おはちめぐり)」と言います。
 
「お鉢巡り」もそれなりに時間がかかるので、それも計画に入れてスケジュールを立てましょう。





このような登山地図にコースタイム(所要時間)や注意すべき点が網羅されています。
無料の簡易的な地図は山ほどありますが、せっかくなのでちゃんとした登山地図を買っておけば記念にもなりますよ。



心得まとめ


①ハイシーズンは避けて、シーズン終盤(9月頭)で計画を立て、
②弾丸登山は避けたスケジュールで、
③吉田ルートの8合目の山小屋を予約しましょう。
④服装は乾きやすくて動きやすい服と防寒を意識し、
⑤不安なら山小屋宿泊対策グッズも持参し、
⑥全行程を通し、早出早着をこころがけましょう。
⑦そして最高地点の剣ヶ峰は逃さない!

無事に下山するまでが登山です。余裕を持った計画を立て、ぜひ富士登山を成功させて下さい。


おわり

3月8日





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