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画像は京都大学体育会サイクリング部公式サイトより

露で邦人学生ら保護“世界一寒い村目指す”(日テレNEWS24)というニュースが流れていました。それを見て僕が思ったことを書きます。


学生の挑戦精神を無視した報道の仕方はいかがなものか


ニュースの記事では

ロシアの東シベリアで、「世界一寒い村」を目指していた日本人の学生4人が寒さで動けなくなり、22日までに保護されていたことが分かった。

地元メディアによると、4人は京都から来た21歳から22歳の学生。

ヤクーツク近郊から、「世界一寒い村」とも言われるオイミャコンまで自転車で向かっていたが、氷点下40℃の寒さで動けなくなりテントにいたところを地元住民が発見し、当局に保護された。1人が足に軽い凍傷を負っているという。

地元当局は「日本人学生の服装とテントは寒さに適していなかった」と話しているという。
(原文ママ)


と報道しており、特に最後の一文は、あたかも学生の不用意さ・無謀さに対する批判を煽るような書き方なのが気になりました。このニュースを見た何も知らない人は「日本の馬鹿な学生が無謀なことをやって失敗した」としか思わないでしょう。こういう報道は本質を欠いています。



学生たちは本当に無謀だったのか


確かに現地の人から見れば軽装に見えたと思いますが、工夫や知恵が込められた軽量化の末の装備だったはずです。

それはこの企画書を見ればわかります。


この企画書の中では次のように防寒対策について説明しています。

・寒さに対する主な対策

寒さには主に VBL 防寒システムで対応します。

VBL とは「Vapor Barrier Liner」のことで、アラスカなど極寒地で採用されている防寒システムです。 現在では多くの極地探検や 8000m 級登山、厳冬期のアルパインクライミングなどで用いられています。仕組みはビニール手袋やネオプレンソックスを装着し皮膚表面の湿度を100%にすることで、発汗作用を抑え気化熱を発生させず、体温の低下を防ぎます。またVBLシステムを採用することで衣類やブーツ、シュラフが汗でぬれ、それが凍り使用できなくなる問題も解決します。 使用するのは走行中の手足と就寝中の全身です。走行中の VBL は体温の過度な上昇を招くため全身では行わず、手足のみとなります。





・計画を立てるに当たって

・〈安東浩正氏〉

2003 年に植村直己賞を受賞し、2002 年の 14927km 冬季シベリア単独自転車横断と 2005年冬季シベリア単独自転車縦断を成し遂げた安東浩正氏の装備をベースとして計画しています。


入念な防寒対策をしており、特に「VBL」という考え方は厳寒地での特殊な防寒対策であり、現地の人から見たら一見すると薄い防寒に見えたのかもしれません。

そもそも京都大学体育会サイクリング部(KUCC)は雪山、海外、など、およそ普通に歩いてでも行くことが難しい場所を自転車で走破している実績がある団体です。



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写真:KUCC公式ホームページより




北極冒険家の荻田泰永さんも強く反応



全く同感です。逆にいえば、生きて敗退出来るということは、ちゃんとエスケープの判断と、その術を用意していたということであり、それも彼らの戦略がしっかりしていたものならではと推測できます。

若者の冒険は素晴らしいことです。

敗者とは冒険や挑戦から最も遠いところにいる者を言います。

今回は何らかの予想外のアクシデントに見舞われしまったのかもしれませんが、荻田さんが言う通り、死んだわけでないので次に活かして欲しいと思います。



2018年2月24日