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駅寝(えきね)、またの名をステーションビバーク(Station Bivouac : STB)…。登山前夜に駅で前泊することを「駅寝」と言います。ひたらくいえば駅で野宿をするということになりますが、単なる野宿とも違う、味わい深さがそこにはあります。そんな駅寝の世界をご紹介します。


駅寝とは…


読んで時のごとく、駅で寝ることです。しかし、たまに終電を逃したオッサンや若者が駅で寝てますが、あれとは根本的に違います。あれは駅で仕方なく寝ることになってしまった人や、酔っぱらって気づいたら駅で寝てた人たちです。本ブログで扱う駅寝とは、「積極的に駅を利用して睡眠をとる行為」を指します。

また、「駅寝」と呼ぶか「ステービバーク(ステビバ)」と呼ぶかですが、Twitter検索したところ、最近はステーションビバークを使っている人のほうが多かったのですが、僕は「駅寝」と呼ぶことにします。「ビバーク」というとやはり緊急避難性が強いので、積極的に駅で寝ることを指すにはちょっと違うと思いますし、そもそも駅寝は日本の文化ですで、無理やり響きよく英訳したものはちょっと違和感があります。

しかし近年のマイカー利用登山の普及や、首都圏から登山口へ直接アクセスする高速バスの出現によって、駅寝の文化自体がが失われつつあることは寂しいことだと個人的に感じています。


登山における駅寝


駅寝はステーションビバークと呼ばれるように、「ビバーク」…すなわち登山やアウトドアにおける緊急避難的な野営のうちのひとつであるという認識もあり、登山スキルのひとつと言っても過言ではありません。

登山における駅寝の最大の目的は、翌朝の一番早いバスまたはタクシーに乗り込み、山に一番乗りでアプローチするために、前のりしておこうというものです。

始発バスに乗ることができれば、登山開始時間も早くなり、下山時刻も早くなり、万が一のアクシデントにも対応できるようになり、登山全体のリスクの軽減になります。

バス利用の場合、始発バス乗ることは非常に重要で、特に地方のバスは本数が少ないので始発を逃したら次は2時間後…ということも少なくありません。
登山者にとって始発バスを乗り逃すことは許されないのです。

しかしながら、自宅から始発列車を乗り継いでもどうしても始発のバスに間に合わない…という人も多くおり、そんな人たちが産み出した技法が「駅寝」です。
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駅寝の方法・作法


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駅寝とは心の所作です。マナーを守り、周りの人たちへの配慮を最優先にするということをまず断っておきます。

では基本的な駅寝のやり方について、5段階にわけてご説明します。

①何時の電車で駅に向かうか

まず、駅には最終電車、ないしは最終に近い電車で行きましょう。あまり早く着きすぎてもいけません。駅寝の寝床作りは終電が終わってからというのがマナーです。上り電車が終わっていても下り電車があるかもしれませんので待ちましょう。

②駅に着いたら気を付けること

駅寝をする前、寝床を作る前はオドオドしていると地元の人に不審がられるので、まるで自分の家のように、「これからここで寝るんですけど何か?」というくらい堂々としていましょう。特に金曜の晩の終電前の駅は気持ちよく酔っ払った人達もいますので、そういう人には愛想よく挨拶するくらいの気持ちでいましょう。

③寝床となる場所を探す

寝床を作る前に、寝床の場所を物色します。これも堂々としながらやるのがベターです。何度も寝ている駅ならお気に入りの場所があったりしてそこを選べばいいのですが、先取りされていたり、久々に来ると駅の改装などで駅寝スペースが無くなっていたりしますので、その都度場所取りが必要になることもあります。

前提として、ホームで寝るのはご法度です。あくまで改札の外で寝ましょう。なるべく暗いところが良いのですが、最近の駅は電車が終わっても消灯しないので暗いところを探すのは難しいです。駅舎の外に出ればいいのですが、庇が無いと風雨が心配です。

僕はとにかく、くぼんだ場所を探します。通路からちょっとくぼんだ、中に入り組んだような場所です。たまに駅の構造上なのか、この場所はなんのためにあるんだ?という場所があるんです。そういうところは人通りも少ないですし、僕は駅寝のための場所だと思っています。

しかしそういう場所が無い駅もありますので、通路の邪魔にならない静かな場所を探すのがいいです。先にすでに場所取りをしている人がいたら邪魔にならない程度に近づいてその並びに場所を取りましょう。

場所を決めたら、あとはマットを敷いて、シュラフを出して寝るだけです。貴重品は枕元に置き、荷物はなるべく広げず、撤収を素早くできるようにします。

④禁止事項

酒盛り等は原則禁止です。駅寝は遊びではありません。人が他にいないときは要検討ですが、人がいるときは酒盛りなどはやめて早く寝ましょう。

ガスストーブなどの火気の使用は絶対に禁止です。駅舎の火事に繋がりますし、これを破ると駅寝が禁止になってしまう事例もあります。

実際に登山者の火気使用によって、休憩室の利用が禁止になってしまった事例として、JR上越線の土合駅があります。土合駅は谷川岳登山基地であり、駅寝の聖地でしたが、登山者の度重なる火気使用によって2016年4月より休憩室が封鎖されるという悲しいことがありました。しかし、土合駅自体は無人駅なので駅全体の完全封鎖は難しいと思いますので、通路等その他のスペースで寝る違法な駅寝愛好家たちはいると思われます。

⑤翌朝の撤収について

翌朝の撤収は素早く行います。始発列車の前に行い、朝駅を利用する人たちに駅寝の痕跡は見せてはいけません。地元の人たちからしても、朝早く駅に行ったら変な人たちが寝てたら朝から気分を害されるでしょう。ですので、さも「今さっきここに来ましたよ?」というようは顔で堂々と駅の通路の片隅に佇むか、タクシー乗り場やバス停に移動しましょう。コンビニがあれば朝御飯でも買いにいって下さい。



そもそも駅寝は違法じゃないのか?


「駅寝は禁止行為では?」「駅寝は反社会的行為だ」そういうお声もあると思います。
確かに駅の中で「この場所での飲酒、座り込み、ダンス等を禁止します」という看板を目にすることはあります。そういうところでの駅寝はおすすめできませんが、中には暗黙の了解で許されている駅もあるのです。

どういう駅かというと、有名な山の登山口である駅などです。登山と駅寝は密接な関係があるように、登山が盛んな地域の駅は、駅寝が黙認されている可能性が高いと言えます。もちろん僕もごく一部の駅しか経験してないので、一概にどこでもOKとは言えませんが、南アルプスが近い、JR甲府駅などは容認されている駅のひとつでしょう。

甲府駅と言えば、日本第二位の高峰「北岳」の登山口である広河原(ひろがわら)までのバスがでております。

山梨交通バスから夏季は朝4時台からバスがでております。これに乗るにはどう考えても駅寝するしかありません。これのためだけにホテルになんて泊まることは労働階級登山者と学生登山者には許されていないのです。

実際に、夏のハイシーズンに甲府駅に行けば駅寝してる登山者は結構いるはずです。駅員さんにとっても毎度のことなので見て見ぬふりですね。



駅寝におすすめの駅


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駅寝におすすめの駅を抜粋でまとめました。
  • JR松本駅 :広い駅だが昇降階段上にデッスペースがあり、駅寝可能。
  • JR甲府駅 :通路に駅寝することになるが、地元の人も駅員さんも慣れている。
  • JR茅野駅 :通路に駅寝可能。
  • JR駒ヶ根駅 :待合室が使えるかも。
  • JR韮崎駅 :待合室が使えるかも。
  • JR長野駅 :広いが可能。
  • JR鹿児島中央駅 :地下通路内が解放されている。
  • JR土合駅 :待合室利用不可
  • JR全国無人駅各駅 :基本無人駅は可能だが、マナーは厳守。
以上は僕が快適な駅寝を出来た記憶のある駅です。基本的に山梨県、長野県の駅は駅寝に寛容な傾向があります。しかし他の地方によっては山麓の駅であろうが、追い出されたり駅員さんに断られる場合もあります。しかし田舎の駅で、かつ、火気を使用しない条件で一夜の宿を借りるつもりで交渉すれば、たいていは軒先くらいは快く貸してくれます。無人駅利用では、ときに地元警察の方と交渉する場面も出てきますが、こちらから紳士となって交渉することが重要です。



番外編①:駅寝を楽しむ人びと


世の中には駅寝が手段では無く、目的になってしまっている人達もいるのです。

代表的なものが「野宿サークル京大駅寝同好会」なる団体があるのですが、2018年3月現在、Twitterが見れなくっております。活動しているのでしょうか。

駅寝はその地域の風土に触れ、地域の生活を知ることの出来る貴重な体験です。その地域の人の大事な交通手段の中心である駅で寝泊まりすることで、単なる野宿を越えた社会的意義を発見することもできるのでしょう。それ自体を楽しむ団体が現れても何も不思議なことはありません。



番外編②:タクシー会社で寝る!?


登山目的で、翌日バスではなくタクシーを予約した状態で駅寝をしようとすると、一定の確率でタクシー会社の社屋に泊まらせてもらえるラッキーイベントが発生します。夜中にタクシーの運ちゃんが話しかけてくるので、それとなく「泊めさせてくれ~」というオーラを出しましょう。もちろん、翌朝そのタクシー会社を利用するのが前提です。

タクシー会社によってその社屋のクオリティはピンキリです。僕は真っ暗な廃屋みたいなところから、こたつ付きの部屋まで体験してます。
本来の駅寝を楽しむ観点から見たら邪道極まりないですが、これも駅寝がもたらす旅の醍醐味というものではないでしょうか。

ちなみに、僕が体験したのは、山梨県の韮崎駅、小淵沢駅界隈のタクシー会社で非公式にやっていただいているサービスです。2018年3月現在もやっているかどうか、タクシー会社によってやっているかどうかは不明なので事前のお問い合わせは必須です。



まとめ


登山スキルとしての駅寝、駅寝の作法、また駅寝そのものを楽しむ事例など…駅寝に関するさまざまなことを紹介しましたが、いかがでしょうか?駅寝をしたくなりませんか?

近年はマイカー利用登山などで急激に失われつつある駅寝文化ですが、気になる方、駅寝未体験の方は是非ともこの夏一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか?新しい世界が広がり、翌日の登山の気分も新鮮なものへと変わるかもしれません。


おわり

2018年3月15日



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