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一般的に人が高所地帯に入ったときに肉体に起こる諸症状を総じて高山病とか高所障害と言います。富士山に弾丸日帰り登山で僕が経験した体調の変化について書きます。



前夜の睡眠時間3時間半


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2018年6月、僕は大学時代の後輩(以下:TN)と二人パーティーで富士山を日帰りで登るという計画を立て、実行しました。

金曜の夜にレンタカーを借りて、そのまま富士吉田市内の道の駅で車中泊、翌早朝に富士スバルラインから富士山五合目を目指しました。

道の駅に着いたのが午前1時くらい、富士スバルライン料金所営業開始時間が午前3時なので、なるべく早く出発したいと考えていました。さすがに3時間以上は睡眠を取りたかったので4時30分に起きて富士スバルラインに向かいました。

富士スバルライン五合目から登山開始をしたのが午前5時50分頃です。

睡眠不足は高所障害を引き起こす大きな要因の一つです。それは十分理解していましたが、時間をうまく作れなかった僕らは3時間半という短い睡眠を余儀なくされたのです。



歩き始めから呼吸浅い


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昨年8月の鹿島槍ヶ岳以来、最高到達標高1,900mを越えてなかった僕が、いきなり車で2,300mまで上がってしまったせいか、五合目から歩き始めたときから呼吸が浅くなっていることを感じました。息が切れやすいというか、息を吸い込んでも身体に取り込まれる酸素の量が少ないような感覚です。それでもなんとか歩くことは出来ていました。

7合目~8合目、標高にして2,800m~3,000m地点を越えた辺りから、呼吸の浅さはかなり増して歩くのがつらくなってきました。筋肉に酸素が行き渡ってないような感覚があり、脚を踏ん張っても力が出ません。身体が重くて脚が上がらないのです。そして低い標高の山ならスイスイ歩けるような斜面でも数歩歩いただけで息がゼェーゼェーとなってしまう状態でした。

ちなみに富士山残雪状況ですが吉田登山口は九合目から上登山道に雪あり、ブルドーザー道は八合目から上雪あり(未整備)でした。



登頂するも、ささいな仕草も億劫なほど


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僕の場合、登っている最中に頭痛や気持ち悪さはありませんでした。しかし身体の重さは標高を上げるにつれて酷くなっていき、まるでヒマラヤの8,000m峰を登っているかのような低酸素状態です。もちろん僕はヒマラヤには行ったことはありませんが、夢枕獏の傑作山岳小説である『神々の山嶺』にはその辛さが克明に表現されてます。







最終的に同行のTNに荷物のほとんどを持ってもらい、お鉢の淵にある富士浅間神社奥宮まで到達できました。TNは一人でお鉢巡りをすることになり、僕は浅間神社奥宮の社の軒下で休んでいました。休憩中、ささいな仕草も億劫でほとんど動くことなく寝て過ごしました。

高山病のとき高所に長くとどまることは望ましくありませんし、ましてや一人で待機するのは危険ですので、皆さんはマネしないで下さい。また、横になることも呼吸を浅くするのでよくないらしいです。僕はこのときは頭痛や吐き気はほぼなかったので休んでも大丈夫だと判断しました。なにより眠かったのです。これは明らかに睡眠不足が響いています。



下山、標高2,700m以下から回復

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しかし1時間も山頂にいるとやがて少しずつ頭痛や気持ち悪さがやってきました…。まるで二日酔いのような感じです。といっても中軽度の二日酔いくらいでしょう。吐きそうなほどではありませんでしたし、頭痛も少しガンガンするというくらいでした。しかし身体を動かすには十分弊害となりました。僕らは下山を開始しました。

下山時も脚に力が入らず、踏ん張りがきかないため、すぐ疲れてしまう状態が続きました。加えて二日酔いのような頭痛と気持ち悪さがあったため、決して楽とは言えないものでした。

まだ雪の残る斜面をザクザク歩き、なるべく力を使わないように降りますが、それでも疲れます。なんとかブルドーザー道に出て、標高3,000mを切ってもまだ疲労感がありました。ところが、2,700mを切ったところから急に脚に力が甦るのを実感、下山のスピードが上がりました。頭痛はまだ少し残っていましたが身体が軽くなってきたのはかなりの回復でした。

そうして、五合目に戻ってきた頃、身体は疲れてはいましたが、高所による異状な疲労感は無くなっていました。なんとか無事に降りれました。



過去の高山病経験


僕は今まで高所で障害を起こしたことが何度かあります。軽い頭痛などは2,500m超級の山に行ったときは幾度か経験しています。

しかし一番酷い症状を起こしたときは約2,400mの地点、南アルプスの南御室小屋(みなみおむろごや)でした。このときは1泊した翌朝に症状が出たのですが、おそらく肺水腫になりかけていました。このときはこれ以上高度を上げずゆっくりと下山をしました(もっとも高度を上げる余力はゼロでした)。登山口まで降りるころには、山中での体調不良が嘘のように治っていました。

思い返せばこのときはハードな登山の後、仕事での肉体労働、寝不足が重なっていたときで、身体への疲労の蓄積が原因だったと思います。そんなに高くない標高にもかかわらずこのような症状が出たということが当時は驚きでしたし、高山病はいつ誰にどのような形で発症するかわからないという教訓になりました。



高山病が発症しなかったとき


過去に高所に行きながらも、高山病が発症しなかったこともあります。前回富士山に登ったときと東南アジア最高峰のキナバル(4,095m)に登ったときです。

この二つの登山の共通点は1週間~2週間前くらいに標高2,500m級の山で1泊以上していたことです。すなわち高所に順応できていたと考えられます。前回の富士山のときは北アルプスに5泊くらいの縦走をした2週間後くらいでしたし、キナバルのときは1週間前に木曽駒で高所順応と称して1泊してます。疲労の蓄積も無かったと言えます。



今回の高山病の原因を考察


今回、僕が恐ろしい高所障害に襲われてしまった原因はたった二つです。

  • 寝不足
  • 高所順応してなかった
以上に尽きると思います。

寝不足→最低でも5時間は寝たいところです。
仕事の疲れやその週の疲れを引きずってはいけません。見た目が元気でも疲労は蓄積されて高所で牙を剥きます。

高所順応→できれば直近一ヶ月で2,500m級の山に泊まりで行きたいものです。それが無理ならせまて日帰りで富士山は止めて7合目~8合目で1泊するべきでした。

昔は僕は自分が高所に強いほうと思っていましたが、どうやら逆で、むしろ弱いようです。同行のTNはピンピンしてましたし、彼みたいなのが本当に高所に強いのでしょう。

2,500m超級の山に挑むときは、己の能力を過信せず念には念を入れた準備をしていかねばならないという大きな教訓となりました。

しかし、高山病・高所障害の発症タイミング、場所、症状の種類は人によって千差万別です。頭痛、吐き気が出たり、いきなり肺水腫になったり、倦怠感だったり…。さらに同じ人でも毎回高所障害の症状は変わってきます。今回のは僕の場合の一例ですので、あくまで参考程度にとどめておいて下さい。

でも次に富士山を登るときは「食べる酸素」を試したいと思います。





おわり

2018年6月11日



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