ガスストーブの点火装置や電子式ライターに用いられる圧電点火装置(イグナイター)ですが、これらが高所で使えなくなるということはよく聞く話です。実際のところどうなのか、実験してみました。



富士山での点火実験


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実験場所は富士山山頂付近です。厳密に最高峰剣ヶ峰ではないので「付近」としました。それでも3,700mくらいあります。気圧は地上の3分の2ほどです。気温は7℃(予報値)でした。

ここでやった実験は
  • ポケトーチが点火できるかどうか
  • 中身のフリント式ライターは点火できるかどうか
  • アルコールストーブが燃焼するかどうか
以上です。



実験方法と結果


ポケトーチ

ではまずポケトーチを点けてみましょう。ポケトーチについてはこちらの記事:SOTOのポケトーチをエマージェンシーギアに。をご覧くださいませ。





実験方法は簡単、ただ点火スイッチをカチッと押すだけです。結果は…


点きません…。


フリント式ライター

次はライターです。ポケトーチから中のフリント式の(摩擦でスパークさせるやつ)ライターを取り出して点火を試みます。ちなみにこのライターはポケトーチにデフォルトで付属しているTOKAIのライターであります。

実験方法は簡単、ただ点火するだけ。結果は…


点きました。


アルコールストーブ(自作)

最後にアルコールストーブの燃焼ですが、


燃焼しました。



ただし風防を用意してなかったので水の沸騰には至りませんでたが、気泡が鍋底に付くくらいにはなりました。富士山では沸点は下がりますが…。



結果の考察:圧電点火装置について


なぜポケトーチが使えなかったのに、ライターは点火できたのでしょうか?二つとも同じ燃料(ブタンガス)を使っているため、燃料そのものが原因では無さそうです。その答えは、ポケトーチは圧電点火装置を用いているからであると考えられます。

ポケトーチの点火装置は圧電素子(ピエゾ素子)という、「圧力を加えると電気を生じる物体」を利用して火花(スパーク)を出してます。これが高所ではうまくはたらかない場合があります。

圧電素子自体が高所に弱いというより、気圧の変化によりガスと酸素の混合比率が平地と変わってくるため、うまくガスと空気がミキシングされないことが点火不良の原因と考えられます。低地では均質にミキシングされた気体にスパークが当たって火が点きます。しかし、高所ではミキシング不良の部分が生じるため、「一点」でしか当てられない圧電点火装置ではスパークがミキシング部分に「外れる」確率が高いのです。

ところがフリント式ライターのように火打石で複数の火花をスパークさせれば数打てば当たるということでミキシングされた部分に当たりやすくなるため、点火出来るのです。

混合された気体に一度火を点けてしまえば、ガスでも高所での燃焼は可能です。



結果の考察:アルコールストーブ


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アルコールストーブも火をライターで点けてしまえば燃えるということが判明しました。

アルコールストーブは副室で気化させたアルコールが蒸気として噴出し、燃焼します(蒸気燃焼)。一方、ガスは空気と混合した状態で燃焼します(予混合燃焼)。ちなみにライターの燃焼は拡散燃焼というもので、燃焼の維持に必要な酸素が炎の外から入ってくるというものです。いわゆる生ガスが燃えているってやつですね。

気圧が低い場所では空気の密度も低いので、ガスの予混合が難しいとすると、蒸気燃焼であるアルコールストーブは高所でも安定している…と結論づけられそうです。今回は沸騰に至るまで実験できませんでしたが、風を防ぐことができればしっかり使えそうな感じでした。

改善の余地ありです。







(参考文献:燃焼-Wikipedia)


おわり

2018年6月12日



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