IMG_20180722_212937_591
ゼロドロップシューズとは、インソールのつま先とかかとの高低差を少なくすることで足裏全体の面で着地することが出来るランニングシューズの総称です。

フラットな着地を得ることでヒールストライク(かかとからの着地)を無くして関節や腱を痛めにくい効果があるんだとか。登山にも応用できそうということで、最近では登山用品店でも取り扱いがあります。

でも実際どうなの?ってことでアルトラ(ALTRA)ローンピーク3.5M(LONE PEAK)を使ってレビューします。



ALTRA (アルトラ) LONE PEAK(ローンピーク)

僕が今回試したのは、つま先が大きくなった形状(フットシェイプトゥボックス)、つま先とかかとの高低差がゼロ(ゼロドロッププラットフォーム)という二点が大きな特徴であるアルトラ社のシューズです。

さらにそのアルトラの中でも人気モデルのトレイルシューズであるローンピーク3.5(以下ローンピーク)をチョイスしました。

IMG_20180724_121047_817
ローンピークはトレイルランニング用のシューズではありますが、ファストパッキングやハイキングでの用途も明示されているので、今回はハイキング(登山)用途で使用しました。

IMG_20180724_121047_822
ローンピークはソールパターンやアッパーの頑丈さから見ても他のアルトラ社製シューズよりタフに作られているので、一番登山向きのモデルだと思って選びました。また、従来のトレイルランニングシューズと比べてもクッション性が高くなっています。ただし、多くの登山靴と異なり通常モデルに防水性能はありません。

カモシカスポーツ曰く「登山にも応用できそう」とのこと。




八ヶ岳でフィールドテスト

実際に八ヶ岳を一泊二日で歩いてみました。コースは…

一日目:美濃戸口→御小屋尾根→阿弥陀岳→中岳→赤岳→横岳→硫黄岳→夏沢峠→オーレン小屋
二日目:オーレン小屋→根石岳→東天狗岳→天狗の奥庭→高見石小屋→麦草峠

時期は2018年7月21日~22日です。
ザック重量はツェルト泊で約8キロ~7キロ程度です。
一部登りでストックを使用しました。
また、靴下はinjijji(インジンジ)の5本指ソックスを使用しました。



ちなみにサイズ感ですが、26.5㎝で僕はちょうど良かったです。他の靴と比較するとモントレイルのマウンテンマゾヒストは26㎝を履いてます。ローンピークは甲が低いので他のの靴よりやや大きめでも良いかもしれません。

20180721063014_IMG_5676
ちなみにかかとには「ゲイタートラップ」というゲイター(ショートスパッツ)を引っ掻けるベルクロが付いてます。



登りはまずまず、下りは足の裏が疲れる

20180721092342_IMG_5711
使ってみて感じたことは、登りや、大きな石や木の根が少ない登山道ではまずまず快適に歩けました。とくに文三郎分岐から赤岳へのジグザグしたザレ場のような登りは快適でした。しかし、石の露出が多い箇所やゴーロ(巨岩が点在する地形)では疲れを感じました。それは下山で顕著だったように思います。

従来の登山靴ならばソールが硬いので、かかとやつま先で岩の上に着地しても一転集中の荷重のため、足裏の負担は少ないのですが、ローンピークはソールが柔らかくて足裏全体でベッタリ着地することになります。したがって岩が露出した地面へ着地する際、その衝撃が足の裏にもろに来るので、足裏やふくらはぎの筋肉に負担がかかるように感じました。

一日目の横岳の岩場もなかなか疲れましたが、それは疲労と暑さのせいもあるかもしれません…。二日目は東天狗岳からためしに天狗の奥庭に行ってみたのですが、ここは大変なゴーロ地帯で、その上を歩くのはなかなか難しく「竹踏み」をやっているような足裏感覚になりました…(逆に体には良い??)そして黒百合ヒュッテから麦草峠も大きな岩が露出した登山道が続きますので、こちらも結構大変でした。

でもこれは普通に考えれば当然のことです。岩の不安定な足場から足裏や足首を守るために硬くてギブスのようになっているのが本来の登山靴ですからね…。それに僕自身がベアフットに慣れていないというのも大きいでしょう。従来の靴とはバランス感覚が変わってくるので慣れが必要なのでしょう。

正直、慣れていない人や足首を捻りやすい人には、いきなり登山での使用はおすすめできません。

でもその分得られるものも確かにありました。



下りで膝への衝撃が緩和された

足裏や、バランスを取るためのふくらはぎなどの筋肉は疲れますが、その代わりに膝へのダメージがだいぶ軽減されていると感じました。

従来の登山靴なら岩場を歩く際、靴底の硬さ故、靴のつま先、かかとなど、エッジの部分で着地することが多いので、一点集中の衝撃が膝にビィーンと響いていきます。しかしローンピークですと足裏全体で着地することになりますので、足裏は疲れますがその分膝への衝撃が分散され、少なくなります。これがヒールストライクによる関節の負担の軽減効果でしょうか。

その証拠に、今回は膝の痛みを感じませんでした。最近僕は登山をしていてもランニングをしていても、膝の痛めやすくなっており、テーピングをすることも多かったのですが、今回は全くと言って良いほど膝には違和感や痛みの兆候がありませんでした。確かに部分的にストックを使用したのもあるかもしれませんが、下りではストックはあまり使用しませんでした。



大きなトゥボックスは下りでつま先が痛くなる?

20180721121155_IMG_5743
もうひとつ、よく聞く心配事として、「アルトラは大きなトゥボックス(靴の先端)なので、下山時につま先が当って痛いのではないか」というのがあります。僕もこれは事前に危惧していましたが、結果的には靴ひもをきつく結べば問題ありませんでした。

アルトラの靴の形状は本来の足の形のように指が広がっておりますが(フットシェイプトゥボックス)、甲はそんなに高くありません。むしろ欧米人に合わせているので低いと思います。なので靴ひもをしっかり結べば甲が抑えられるので、靴の中での足の動きも十分抑えられます。ちなみに僕は甲はそんなに高くはないほうです。(普段スカルパの登山靴を履いてます)

また、ローンピークはしっかりと靴ひもを結ぶと、甲の上がキュッと締まる形状となっているため、「ヒールロック」※をしなくともまるでヒールロックをしているかのようなホールド感があります。これにより下山により指が靴の中で当たったりすることはありません。むしろ足指が自由になって快適です。特に小指が全く干渉しないのは気持ちが良いです。

※ヒールロックについては別記事:ローカットシューズで下山時に爪先を痛めない靴紐の結び方。に書いてあります。



総評:岩場は不向き、膝には良い!

総評としては、岩が多い登山道には不向きだが、比較的平坦なロングトレイルには有効かな?というところです。ローンピークで歩きやすいのはザレた登山道や大きな岩場が連続しないような登山道でしょう。なので槍ヶ岳~穂高連峰の縦走、剱岳など登山には向かないかもしれません。しかしアルプスでもザレたジグザグの登りや、奥秩父や奥多摩の樹林帯などではゼロドロップが力を発揮しそうです。もちろんもっと低山でも良いと思います。

それに長時間履いていても従来の登山靴のように締め付けられる感覚が無いので、ロングトレイルや長期縦走でも足への負担が少なくなるでしょう。

そしてなんと言っても膝への衝撃を緩和できる可能性があるのが評価できる点です。これがベアフットの効能だとすれば、ランナーや膝痛持ちの登山者にはおススメしたいですね。

しかし、その分他の筋肉やバランス感覚を鍛えなければ膝への衝撃を緩和することはできないということを忘れてはいけません。

ゼロドロップに慣れて膝に衝撃を与えない歩き方、身体のバランスを身に付けることが出来れば、ローンピークは長距離歩行(走行)の良いパートナーになるかもしれません。

なお、このレビューは僕個人の感想なので感じ方や効能には個人差があることを断っておきます。



2019年2月9日追記:ローンピーク4.0日本上陸

先日、ローンピークの最新バージョン、ローンピーク4.0が日本にも正規入荷しましたね。

3.5と比べてアウトソールのパターンはより深くなり、アッパーはよりしなやかになっているそうです。

ゼロドロップローカットハイキングの代名詞はさらなる進化を遂げたようです。



おわり
2018年7月24日