他社メーカー同士のガス缶とストーブは使ってはいけないのが通説ではあるが、使えるケースがほとんどというのが実態。使用できる根拠とその際のリスクについて考察してみた。
他社メーカー同士のガスとストーブは使えるのか?
主に登山で使用されるガスのカートリッジ(OD缶、ダルマ缶とも)は色々なメーカーが販売している。しかし、バルブ形状は一緒に見えるのに「必ず同一メーカーのコンロを使用してください」との文言が付いている。メーカーに問い合わせても「同じメーカーを…」としか言わない。でもその実態はどうなのだろうか?
アウトドア用ガスカートリッジの元祖

ガスカートリッジタイプの元祖はイギリスのEPIgas(イーピーアイ)と言われている。まだメイドインイングランド時代のEPIが世界に先駆けてセルフ・シーリング・セーフティ・バルブを採用した小型のガスカートリッジおよびガスストーブを作った…とホームページで謳っている。
スウェーデンのプリムス社のほうが燃焼機器メーカーとしては歴史があるが、現在のガスカートリッジを基台としてストーブ(コンロ)を直結させる方式はEPIが先駆けのようだ。
そして瞬く間に世界中でそれがスタンダードになり、どのメーカーも模倣していった事実は今の世の中を見れば自明。そしてカートリッジのバルブの形状も合わせて同じ形状のものが普及していったと思われるが…。
このEPIは初期型から現行品のストーブに至るまで現在のカートリッジが使えるという。ということは少なくもEPIについてはカートリッジの規格は創業時から変更されていない。
EN417という欧州規格
先駆けであるEPIのカートリッジを調べていけば他のメーカーのこともわかりそうだ。
検索していくと、英語版Wikipediaに至った。どうやらEPIのガスカートリッジの規格はEN417というヨーロッパの規格らしい。そしてそれはほとんどの場合、7/16”UNEFネジ付バルブというバルブが付いたものらしい。なかにはバルブがない貫通式のものもある。
そして、この7/16”UNEFネジ付バルブというのが、正式名称がLindal B188バルブというらしく、ドイツに本社を置くLindal社(英字の企業サイトに飛びます)が作っているとのことなのだ。本国サイトに見覚えのあるバルブの写真が!!
ちなみにLindal社はエアゾール容器の世界的な専門メーカーで、世界各地に拠点を持っているグローバル企業、らしい。
結論:どのメーカーも欧州規格を採用している
Wikipediaには、このLindal(リンダル)バルブを使用しているサプライヤーはEPI、コールマン、GoSystem、プリムス、Brunton、ジェットボイル、スノーピーク、キャンピングガスがあるとしている。写真が載ってるので多分オプティマスも。
てことは全部一緒だということだ。知らない名前もあるけど。
EPIが最初に作ったネジの形状を変えると自社どうしで互換性が無くなるので、変えるわけにはいかないので、今まで同じ規格を使ってきた。EPIに続いた他社メーカーもユーザー利便性を考えて同じ規格に揃えたのは納得がいく。
その証拠として、僕がニュージーランドに行ったとき、アウトドア用品店で買ったわけわからんメーカーのガス缶とプリムスのストーブで互換性があったのだ。
他メーカー同士を使うデメリット:生産物賠償責任保険について
とはいえ、各メーカーは「必ず同一メーカーを使用してください」と謳っている。なぜだろうか。
ここで重要なのが生産物賠償責任保険というもの。ガス缶にも書いてあるが、これは消費者がこの商品を使って損害が生じたときにメーカーが賠償してくれるというものだ。テントが燃えたり、火傷したりしてもメーカーが損害賠償してくれるわけ。ただし、正しく使った場合に限る。つまりガスとストーブメーカーが同一の場合に限るのだ。
というのも、違うメーカー同士を使っていたらどっちが不具合を起こしたのかという問題が発生し、責任の所在が曖昧になるからだ。検査機関でもガスとストーブ同一の組み合わせで安全性を検査し、保証している。だから、違うメーカー同士を組み合わせて使って事故を起こしてもメーカーは賠償してくれない。つまり、責任逃れで互換性が無いと言っているだけで、実際は互換性がある。いかにも日本らしい。
しかし、違うメーカー同士だと、ガス缶側のバルブは同じでもストーブ側のピン(ガス缶のバルブを押すところ)の長さが微妙に違ったりすることもあるらしい。純正の組み合わせじゃないとガスの出が悪くなったり、出過ぎたりして危険という話もあるので一概には言えないが。
あとこれは僕の見解だが、他メーカー同士を繋ぐのは、どこかカッコ悪い。ドラえもんの頭にコロ助の胴体をくっつけるようなもん。そのメーカーが好きならちゃんと純正品を買ってあげたい。
さらに余談だが、缶とストーブの互換性云々以前に、世界の有名メーカーではない中国製ストーブ等の中には正常に燃焼しない不良品も結構あるらしいので、くれぐれもご注意を。
おまけ(ガス缶の処分)
使い切ったガス缶を処分する際の穴あけアイテム。
おわり
2018年7月30日
2019年4月21日加筆修正
2019年8月30日加筆修正
2020年2月26日編集
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コメント
コメント一覧 (3)
>僕がニュージーランドに行ったとき、アウトドア用品店で買ったわけわからんメーカーのガス缶とプリムスのストーブで互換性があったのだ。
アメリカはUS規格で違うようですね
あとは日本でも売っているCAMPINGAZ(ネジ山なし)も…
コメントありがとうございます。
アメリカで実際に触ったことはありませんが、アメリカの代表的メーカー、MSRは少なくとも同じみたいですが。つまりアメリカ規格と互換性があるかと。
キャンピングガスはそもそも形状が違うので比較対象ではないし、あれは今のネジの規格と争って負けた規格ですからね。
OD缶ではないですが、他にUS規格のこういうごついのも使用されているようです。
https://www.walmart.com/ip/Coleman-Propane-16-oz-Camping-Stove-Replacement-Fuel/20971271
一応OD缶と相互の口金変換アダプタも売られていますが