他社メーカー同士のOD缶とガスストーブは使ってはいけないのが通説ではあるが、使えるケースがほとんどというのが実態。使用できる根拠とその際のリスクについて考察してみた。



他社メーカー同士のガスとストーブは使えるのか?

主に登山で使用されるガスのカートリッジ(OD缶、ダルマ缶とも)は色々なメーカーが販売している。しかし、バルブ形状は一緒に見えるのに「必ず同一メーカーのコンロを使用してください」との文言が付いている。メーカーに問い合わせても「同じメーカーを…」としか言わない。でもその実態はどうなのだろうか?

アウトドア用ガスカートリッジの元祖はどこなのか

20180729235630_IMG_5878
ガスカートリッジタイプの元祖はイギリスのEPIgas(イーピーアイ)と言われている。まだメイドインイングランド時代のEPIが世界に先駆けてセルフ・シーリング・セーフティ・バルブを採用した小型のガスカートリッジおよびガスストーブを作った…とホームページで謳っている。

スウェーデンのプリムス社のほうが燃焼機器メーカーとしては歴史があるが、現在のガスカートリッジを基台としてストーブ(コンロ)を直結させる方式はEPIが先駆けのようだ。

そして瞬く間に世界中でそれがスタンダードになり、どのメーカーも模倣していった歴史がある。そしてカートリッジのバルブの形状も合わせて同じ形状のものが普及していったと思われる。

注目すべき点はEPIは初期型から現行品のストーブに至るまで現在のカートリッジが使えることだ。ということは少なくもEPIについてはカートリッジの規格は創業時から変更されていないことになる。






イーピーアイガス(EPIgas) 230パワープラスカートリッジ G-7009















EN417という欧州規格

20180719200337_IMG_5649
写真はOD感からもぎとったリンダル社製バルブ

先駆けであるEPIのカートリッジを調べると他メーカーのこともわかってきた。

検索していくと、英語版Wikipediaに至った。どうやらEPIのガスカートリッジの規格はEN417というヨーロッパの規格らしい。そしてそれはほとんどの場合、7/16”UNEFネジ付バルブ(B188valve)というバルブが付いたものらしい。なかにはバルブがない貫通式のものもある。(おそらく貫通式を採用しているのがフランスのキャンピングガスCAMPING GAZのことだろう)

そして、この7/16”UNEFネジ付バルブというのが、正式名称がLindal B188バルブというらしく、ドイツに本社を置くLindal社(英字の企業サイトに飛びます)が作っている。本国サイトに見覚えのあるバルブの写真があった。

ちなみにLindal社はエアゾール容器の世界的な専門メーカーで、世界各地に拠点を持っているグローバル企業、らしい。







結論:大多数のメーカーは同一の欧州規格を採用している

Wikipediaには、このLindal(リンダル)バルブを使用しているサプライヤーはEPI、コールマン、GoSystem、プリムス、Brunton、ジェットボイル、スノーピーク、キャンピングガスがあるとしている。写真が載ってるので多分オプティマスも。

てことは全部一緒だということになる。知らない名前もあるが、それだけ世界で普及した規格ということになる。

EPIが最初に作ったネジの形状を変えると自社どうしで互換性が無くなるので、変えるわけにはいかず、今まで同じ規格を使ってきたと考えられる。EPIに続いた他社メーカーもユーザー利便性を考えて同じ規格に揃えたのは納得がいく。なぜなら後発が独自の規格で攻めても売れずに淘汰されてしまうからだ(キャンピングガスのように…)。

その証拠として、僕がニュージーランドに行ったとき、アウトドア用品店で買ったわけわからんメーカーのガス缶とプリムスのストーブで互換性があったのだ。この規格は世界共通とみてもいいのかもしれない。

他メーカー同士を使うデメリット:PL保険(生産物賠償責任保険)について

とはいえ、各メーカーは「必ず同一メーカーを使用してください」と謳っている。なぜだろうか。

ここで重要なのが生産物賠償責任保険(PL保険)というもの。国内のどのメーカーもこれに加入しているが、これは消費者がこの商品を使って損害が生じたときにメーカーが賠償する用意があるということだ。例えばテントが燃えたり、火傷したりしてもメーカーが損害賠償してくれる。ただし、各社必ず注意書きとして、他メーカーを使った場合は責任を負いかねますと記載がある。

なぜこう書いてあるかというと、違うメーカー同士を使っていたらどっちが不具合を起こしたのかの検証が難しく、責任の所在が曖昧になるからだ。

日本で流通するガス機器は全て第三者の検査機関でガスとストーブ同一の組み合わせで安全性を検査し、保証しているというのも理由のひとつだ。他メーカーのカートリッジとの安全確認まで行なっていないので、保証範囲も自社カートリッジまでということになる。

かなりメーカー都合の理由ではあるが、企業として自社を守るためにやっていることだ。ストーブのメーカーとしては「自社カートリッジを使うことが正しい使い方」としてる以上、ユーザーがそれを破った場合責任を負いませんよという理屈である。

そもそもPL保険はPL法によりユーザーから企業を訴えられたときのために企業が入るものだが、正しく使われてない場合はPL法も効力を発揮しない可能性があることを考慮したい。

他メーカー同士を使いたい場合は?

実際は互換性があるが、企業の事情と、検査機関で検査した建前上、他メーカー同士の組み合わせはNGとしているのが実態だ。

事実、OD缶の製造会社は大体のメーカーが東邦金属という会社を使っている。しかしプリムスは製造会社がコロコロ変わることがあるので注意。同じ会社が作っているかどうか確認してみよう。

どちらにせよ、他メーカー同士を使う場合は山やキャンプ場で使う前に家で点火できるか試しにやってみることをおすすめする。前は互換性あったけど、ガス缶の個体差でダメだったなんてこともなくなない。

また、ガスの組成は各社異なるため、各社とも他社のガスで燃焼した場合のCO(一酸化炭素)の数値などは想定していないので、それに起因する事故の可能性についても留意しておきたい。

リスクを考えるなら他社ガスはやめたほうがいい

ここまで色々書いたが、自社同士のガスだからといって必ずしも安全ではないというのも事実。検査しているとはいえ、人間の作るものなので事故は起きる可能性はゼロではない。他社ガスを使って何かあっても賠償してもらえないのは仕方ないが、同じメーカーのガスを使って何かあれば賠償してくれるのだからそうしたほうがいい。

あと単純に他社ガスを使っていると見た目がチグハグというか、少し格好悪い気がする。僕の感想ですが。

おまけ(ガス缶の処分)

使い切ったガス缶を処分する際の穴あけアイテム。
これを使えば穴をあけて金属ゴミ(自治体で異なる)として処分ができる。



おわり
2018年7月30日
2022年3月31日最終更新

このブログが面白いと思ったら↓クリックお願いします!
にほんブログ村 アウトドアブログ 登山へ
にほんブログ村

登山・キャンプランキング