山をやる人にとって、特に“結婚”と“子育て”は大きな“壁”のように思います。登山者はこの二つにどう向き合うべきなのでしょうか。
子育てを始めたばかりの筆者が考えてみました。
山ヤ人生三大北壁
かつて、就職”、“結婚”、“子育て”は「山ヤの人生三大北壁」と呼ばれていました。これはヨーロッパアルプス三大北壁になぞらえて、本気で登山をする者にとって達成することが困難な物事の例えです。しかし、本気で登山をしないかぎり、機会と本人の意思さえあれば、達成可能な課題かなぁと僕は思っています。特に“就職”なんてのは、今のご時世大体の人が何かしらの職業には就いていると思います。無職クライマーなんて、かなりガチです。
そりゃあ、一年に200日とか山に入って、海外遠征もする人は普通の会社に勤めるのは難しい時代もありましたが、今は職業も多様化してますし、色々な仕事がありそうですが…。
超一流クライマーの佐藤裕介氏や、平出和也氏、サバイバル登山家の服部文祥氏もお子さんがいますし。
まあ、そこまでブッ飛んだ山ヤはここではひとまず置いておいて、残りの二つ、“結婚”と“子育て”について語りたいと思います。
この二つはごく普通の山ヤさんでも難しいと思っている人もいる…かもしれません。
質問箱の悲痛な相談
僕がこの「登山者の結婚と子育て」について語ろうと思ったきっかけは、質問箱に貰ったとある質問でした。
その内容とは「20代童貞山ヤです。彼女ができる気がしません。何かアドバイスを下さい(要約)」というものでした。
なんとも悲痛な声です。あまりに悲痛すぎて一見ネタのようですが、僕にはこれが本当のことだということがわかります。なぜらなら僕もそうでしたから。
僕もそこら辺にごまんといる大衆登山者の一人ですが、20代の頃は結婚や子育てなんて夢のまた夢と思っていました。
僕はこの質問箱の返答として、「とりあえずその鬱屈とした想いを持ったまま山を登り続けこと。そうすれば自ずと答えが見えてくる」という感じで答えました。そのときは字数制限もあり、曖昧な感じで書いちゃいましたが、ここでその真意について語りたいと思います。
若者と山
これは僕の経験なので、人それぞれかもしれませんが、山を一人もしくは、男衆のみで登ってばかりいると、何故かカップルが妬ましくて仕方なくなります。
カップルで山に登っているのなんて、けしからん!カップルは下界でデートしてろ!と叫びたくなるのです。
なので、質問箱の若者のような悩みも生まれます。「俺はこんなところで何をやってるんだ?このまま彼女も出来ずに山に登り続けるだけの人生なのか?」と思っていました。
しかし、山をやっていて、彼女が欲しい若者にあえて質問します。
「本当に彼女が欲しいと思ってますか?」
冷静になるまで山に登り続けろ!
本当に彼女、必要でしょうか?
実は結構独り身の生活をエンジョイしてませんか?彼女が出来たら仲間と山に行ったり、一人で山に行くこともあまり出来なくなりますよ?
ちょっと寂しくなったから彼女が欲しいなんてのは、安易な考えなのかもしれません。今の登山ライフと彼女との生活、天秤にかけてみてはどうでしょうか。
答えは山にあります。
山に登り続ければ答えは見えてくると思います。質問箱で僕が「とりあえず登り続けて」と返答したのはそういうことです。登り続けているなかで、自分の人生何を優先すべきか考えてはどうでしょうか。
もし……それでも彼女が欲しい!結婚したい!!と思うのであれば、山なんて行ってる場合じゃありませんよ。
土日は友達と飲み会行って、合コン行って、出会いを求めましょう。「山好き」の彼女なんて幻想なのでまずは普通の女性と出会える場所に行くのです。
僕の場合は山に登り続けて自分の能力・体力の限界を感じ始め、これ以上、山を発展させるのはやめようと思ったのがきっかけだったように思います。(山を発展させる=クライミング、山スキー、山小屋で働いたり等)
実際、結婚して子供を持つと山ヤはどうなるのか?
結婚したくらいなら、山にはまだ行けるかもしれませんが、子供が産まれ、赤ん坊のうちそうはいきません。
もしも「母親はともかく、父親なら子供が小さくても山に行けるのでは?」と思った人がいたら、今どきそんな考えでは彼女すら出来ないと忠告しておきましょう(笑)。
子育てが始まってしまったら、もう自分のやりたいことは二の次三の次、もしくは実行不能になります。特に長時間の外出などは不可能です。これは母親はもちろん、父親もそうです。
まあ、奥様と赤ん坊を残して山に行く旦那様も世の中にいるかもしれません。でもその人は相当奥様に甘やかされているか、奥様に苦労を強いているか…。もしくは、プロとして登山を生業にしている人でしょうか(ガイド等)。
もちろん、子供が大きくなれば父親が留守にしても大丈夫かもしれませんし、子供と一緒に山に登ることも出来ると思います。むしろそうしたいですね。それでも子供が産まれてから、早くて1年~2年先の話でしょうか。
なので、クライミングを始めて難度の高い登攀をしたい!とか、山小屋で働きたい!とか、山が近い長野に移住したい!だとか言う人は、正直結婚(子育て)には時期尚早という感じです。
そういう色々なリスクがあることを結婚後(育児開始後)にやるなんてことは、普通はなかなか出来ません…。
今、山を登る人で、結婚したい!と思っている人はここまで念頭に置いて決断すべきだと思います。本当に自分の山に一段落つけかれるのかどうか、その覚悟と向き合ってみましょう。そうすれば「今自分は本当に結婚したいのか」ということがわかるかもしれません。
ちなみに、僕は今赤ん坊子育て中ですので、一時的に山と決別をしています。それは仕方ないというより、そういうものだと受け止めてます。子を育てる以上の大事はありませんから。
コメント
コメント一覧 (2)
私は40代男性、小中二人の子持ちですが、
この状態で普通に月2ペースで山行けてますよ。
嫁さんは登山に興味ないので、家でゴロゴロされるより全然いいからと、気持ち良く送り出してくれます。たまに子供も連れて行きます。
月3回行くときもあります。泊まりも可能ですよ。
ただし…
このスタイルを確立するためには、
それなりの努力とコツがあります。
まず、運動会、授業参観、旅行など
家族の予定を最優先した計画を立て、申告すること。嫁さんの自由時間とかも考慮すべきです。
次に土日の2日を上手く使うこと。土曜は家族と共に買い物、家事なども積極的にこなし、日曜は山へ。できれば日曜の夕飯までには帰るのが望ましいですね。時には土曜の夕食後に車で出発し、登山口で仮眠、明け方から登ったりもします。私は東京在住なので、このやり方で八ヶ岳、金峰、瑞牆、燧、至仏、日光白根あたりに登りました。
ハードですが好きな登山なので、山に行けないストレスを抱えるよりよほど気分が良いですね。
また、突発的に山に行きたい衝動に駆られた時は、日曜の始発で奥多摩などの山にサクッと登り、午後イチには帰宅とかもやったりします。
日頃から、このような努力と工夫をしていれば
泊まりの登山も堂々と申告できますよ。もちろん数ヶ月に一回ぐらいですけどね。
基本的に結婚は登山の北壁にはならないと思います。
丁寧なコメントありがとうございます。
山と子育ての先輩のご意見、大変参考になります。
ブログ内では僕の言葉数が足りなかったのですが、山に好きに行くのが難しいのは子供が1~2歳の小さいうちだと思っています。今僕自身がそうです。これは今まで山にたくさん行っていた人からしたら、劇的な変化かと思い、この記事を書きました。
当然僕も子供が大きくなれば一緒に山に登りたいですし、naodakeさんのようにご家族への配慮を欠かさずやって、円満に一人でも山に登りたいと思っています。
結婚が「北壁」というのは、「自分の山登り」を続けるクライマーにとっての喩えですが、一般登山者でも自分のためだけに登ってばかりいると機会を逃しがちになるだろうと思って書きました。実際は僕も含め皆さん結婚子育てされているので、北壁と思うかどうかはその人の心持ちだと思います。