自作のトルネード式アルスト、作り方によって火力がどう変わるのか、どうすれば高火力になるのか…検証してみました。
まずは、何を持って「高火力」と言えるのか考えてます。
より早く水を沸騰させることが出来れば高火力かもしれません。しかし、クッカーやゴトクとの相性もあるので沸騰速度が高いからと言っても、一概にストーブの性能が良いとは言えません。かと言って、いちいち最適な径のクッカーや最適な高さのゴトクを用意するのも難しいところです。
ということで、ここでは高火力ストーブ=より早く燃料を消費するストーブ(燃焼スピードが早いストーブ)ということにしたいと思います。燃料が早くなくなるということは、単位時間あたりにより多くのエネルギーが使われていると考えられます。
細かいエネルギーロスとかは無視します(笑)。10mlのアルコールをどれくらいの時間で使いきるかで判断しました。
今回検証してみるアルコールストーブの種類は、ネットの先人たちの知恵が詰まったトルネードジェット式のアルコールストーブです。そしてカタチとして目指すのはこちらのRSR STOVE です。
この検証のためだけに、4炎孔タイプを1個、8炎孔タイプを6個、16炎孔タイプを7個、合計14個ものアルストを作ってしまいました…(笑)。
仕様の変更と言っても単純な形状なので変化をつけれる部分が少ないのが事実です。分かりやすいところで、本体の高さをいじってみることにしました。
高さですが、45㎜以上だと燃焼時間が長く、火の勢いが弱くなるので沸騰まで時間ががかかる傾向にありました。これは炎孔の数が多くても少なくても同じです。逆に40㎜より低くしても燃焼スピードはほとんど変わらないようです。(逆にあまり背を低くしすぎると本燃焼が起きなくなる)
その理由ですが、多分、高さがあると燃料が毛細管現象で昇ってくるのに時間がかかったり、量が少なくなるのではないかと思います。これは僕の推測なので事実ではないかもしれませんが…。
高さは40㎜程度がちょうど良いと思います。
ジェット炎孔を増やせば火力が上がるのでは?と安易に考えたのでやってみました。通常8個だった炎孔を倍の16個にしてみました。
ここで、孔を倍に増やしたところで一個一個の孔から出る炎の大きさが半分になるだけで、放出される炎のトータル量は変わらないのではないか?という仮説が浮上します。しかし、アルコールの余剰気化ガスが失われているとしたらどうでしょうか。
余剰気化ガスとは、気化したけどジェット孔から噴出しきずに行き場を失ったアルコールです。余剰気化ガスは液体に戻り、副室の折り目を通って主室に戻ります。戻ったアルコールは再び副室の隙間を昇っていくというのが通説のようですが、僕はこの点に少し懐疑的です。
僕は、余剰気化ガスは主室に戻っても全てが再び隙間を昇っていくわけではないのではないか。と考えました。
そう思った理由として、8炎孔のアルコールストーブの燃焼中に主室に溜まったアルコールがグツグツと泡を立てて沸騰していたからです。これは主室のアルコールが温められ過ぎて副室を上昇するのとは別に主室から直接気化してしまっているように見えました。
つまり、ジェットの出口不足していることにより、本来噴出される燃料のロスが起きてることが言えるのではないでしょうか?その証拠に、4炎孔の場合グツグツ、プツプツの度合いは増しました。(もちろん緻密でバランスの良い構造ならそういうことは起きないのかもしれませんが…)
ということで、ジェット炎孔8から16に増やしてみました。
実際に8炎孔タイプより16炎孔タイプのほうが燃焼スピードが早い傾向にありました。10ml燃焼タイムは本体の高さが同じ40㎜程度で、8炎孔タイプはだいたい3分10秒前後、16炎孔はだいたい2分20秒くらいです。
見た目も8炎孔より16炎孔のほうが渦が収束され火柱が太く高くなります。見るからに強そうです。
また、ジェットが吹き出る角度(孔を開ける角度)も調整しました。
45度くらいだと炎が寝すぎてしまい、グワングワンと大きくゆっくり回転してしまいます。60度くらいにすると束になりやすく、火柱が安定します。
その燃焼スピードがあまり振るわなかった機体の副室壁の折り目を押しこんでほんの少し狭くしてみました。すると、10ml燃焼タイムが50秒ほど早くなったのです。
つまり、副室壁の折り目の深さも火力に作用すると言えます。
折り目の本数ですが、一本が深すぎなければ数は増やしても減らしても火力は変わらないようです。目安としては無理無くインナーをアウターに押し込めるくらいの本数と深さで折るのがちょうど良いのではないでしょうか。
前回まで僕がやっていた作り方は実はジェット炎孔を開ける際、裏側にもわずかに穴が貫通して空いてしまっていたのです!(薄々気付いてましたが…)
この穴(隙間)のせいで気化アルコールが漏れているので、燃焼スピードは上がっても火力には繋がらないでしょう。つまり単純にエネルギーロスになります。
高火力を目指すなら、なるべく多くの気化アルコールをジェットから噴出させるべきです。ということで作り直しです。
ざっくり言うと、このラクガキのようになります(笑)。
つまり、孔を開ける位置を上にしました。今までの「旧」位置では裏面にも穴が開いていました。「新」位置ではその心配はありません。ただ、缶の厚みのある部分を貫通させるので電動ルーターがおすすめです。
ネットで調べた情報によると、この裏に空いた穴の部分を耐熱接着剤で埋めるという方法があるみたいですが、それは正直面倒なので、穴の開ける位置を変えて解決しました。
表面のジェット孔位置もかなり上になります。したがって、アウターパーツを折り返してインナーとの隙間を埋めようとするとジェット孔を塞いでしまいます。なので、ほぼ嵌め込み、縁を炙って、なめして、馴染ませて隙間埋めは終わりであります。それで案外うまいこと隙間はなくなることを知りました。今まで汚ならしく折りかえしていたのは何だったんだ…。
こちらが高さ40㎜、8炎孔タイプ。10ml燃焼タイムは4分30秒と燃費性能が改善。
8炎孔タイプを上から。渦は弱め、火柱が小さめなので径の小さいマグクッカー向き。
こちら高さ40㎜、16炎孔タイプ。10ml燃焼タイムは3分37秒。
16炎孔タイプを上から。炎の渦が8炎孔タイプより収束しています。火柱が高いので径の大きな浅型クッカー向き。
おわり
高火力の定義
まずは、何を持って「高火力」と言えるのか考えてます。
より早く水を沸騰させることが出来れば高火力かもしれません。しかし、クッカーやゴトクとの相性もあるので沸騰速度が高いからと言っても、一概にストーブの性能が良いとは言えません。かと言って、いちいち最適な径のクッカーや最適な高さのゴトクを用意するのも難しいところです。
ということで、ここでは高火力ストーブ=より早く燃料を消費するストーブ(燃焼スピードが早いストーブ)ということにしたいと思います。燃料が早くなくなるということは、単位時間あたりにより多くのエネルギーが使われていると考えられます。
細かいエネルギーロスとかは無視します(笑)。10mlのアルコールをどれくらいの時間で使いきるかで判断しました。
今回検証してみるアルコールストーブの種類は、ネットの先人たちの知恵が詰まったトルネードジェット式のアルコールストーブです。そしてカタチとして目指すのはこちらのRSR STOVE です。
この検証のためだけに、4炎孔タイプを1個、8炎孔タイプを6個、16炎孔タイプを7個、合計14個ものアルストを作ってしまいました…(笑)。
まず着目したのは本体の高さ
仕様の変更と言っても単純な形状なので変化をつけれる部分が少ないのが事実です。分かりやすいところで、本体の高さをいじってみることにしました。
高さですが、45㎜以上だと燃焼時間が長く、火の勢いが弱くなるので沸騰まで時間ががかかる傾向にありました。これは炎孔の数が多くても少なくても同じです。逆に40㎜より低くしても燃焼スピードはほとんど変わらないようです。(逆にあまり背を低くしすぎると本燃焼が起きなくなる)
その理由ですが、多分、高さがあると燃料が毛細管現象で昇ってくるのに時間がかかったり、量が少なくなるのではないかと思います。これは僕の推測なので事実ではないかもしれませんが…。
高さは40㎜程度がちょうど良いと思います。
次に着目したのは炎孔の数
ジェット炎孔を増やせば火力が上がるのでは?と安易に考えたのでやってみました。通常8個だった炎孔を倍の16個にしてみました。
ここで、孔を倍に増やしたところで一個一個の孔から出る炎の大きさが半分になるだけで、放出される炎のトータル量は変わらないのではないか?という仮説が浮上します。しかし、アルコールの余剰気化ガスが失われているとしたらどうでしょうか。
ジェットの出口を増やして余剰気化ガスを噴出させる
この手のアルコールストーブの仕組みは、主室で温まったアルコールが副室の隙間を上昇して気化して噴出したところに引火してジェットとなっている…と僕は理解しています。余剰気化ガスとは、気化したけどジェット孔から噴出しきずに行き場を失ったアルコールです。余剰気化ガスは液体に戻り、副室の折り目を通って主室に戻ります。戻ったアルコールは再び副室の隙間を昇っていくというのが通説のようですが、僕はこの点に少し懐疑的です。
僕は、余剰気化ガスは主室に戻っても全てが再び隙間を昇っていくわけではないのではないか。と考えました。
そう思った理由として、8炎孔のアルコールストーブの燃焼中に主室に溜まったアルコールがグツグツと泡を立てて沸騰していたからです。これは主室のアルコールが温められ過ぎて副室を上昇するのとは別に主室から直接気化してしまっているように見えました。
つまり、ジェットの出口不足していることにより、本来噴出される燃料のロスが起きてることが言えるのではないでしょうか?その証拠に、4炎孔の場合グツグツ、プツプツの度合いは増しました。(もちろん緻密でバランスの良い構造ならそういうことは起きないのかもしれませんが…)
ということで、ジェット炎孔8から16に増やしてみました。
炎孔を増やし、ジェットの角度も調整してテスト
実際に8炎孔タイプより16炎孔タイプのほうが燃焼スピードが早い傾向にありました。10ml燃焼タイムは本体の高さが同じ40㎜程度で、8炎孔タイプはだいたい3分10秒前後、16炎孔はだいたい2分20秒くらいです。
見た目も8炎孔より16炎孔のほうが渦が収束され火柱が太く高くなります。見るからに強そうです。
また、ジェットが吹き出る角度(孔を開ける角度)も調整しました。
45度くらいだと炎が寝すぎてしまい、グワングワンと大きくゆっくり回転してしまいます。60度くらいにすると束になりやすく、火柱が安定します。
さらに、副室の折り目の数や深さを変えてみる
8炎孔タイプと比べて、16炎孔タイプが燃焼スピードが早い=火力が強い傾向にあったんですが、16炎孔にもかかわらず、中には思うような成績が出ない機体もありました。つまり、実は他にも火力を決める要素がありました。その燃焼スピードがあまり振るわなかった機体の副室壁の折り目を押しこんでほんの少し狭くしてみました。すると、10ml燃焼タイムが50秒ほど早くなったのです。
つまり、副室壁の折り目の深さも火力に作用すると言えます。
折り目の本数ですが、一本が深すぎなければ数は増やしても減らしても火力は変わらないようです。目安としては無理無くインナーをアウターに押し込めるくらいの本数と深さで折るのがちょうど良いのではないでしょうか。
まさかの気化アルコール漏れ発覚
ここまでで、燃焼スピードを上げるには、- 高さは40㎜くらい
- 副室の折り目の深さは最小限
- 余剰気化ガスが噴出できるほどの十分なジェット炎孔数
があれば良いということがわかってきました。で、ひとつ気がついたのです…。前回このブログでご紹介した作成方法には致命的な弱点があることに…。
前回まで僕がやっていた作り方は実はジェット炎孔を開ける際、裏側にもわずかに穴が貫通して空いてしまっていたのです!(薄々気付いてましたが…)
この穴(隙間)のせいで気化アルコールが漏れているので、燃焼スピードは上がっても火力には繋がらないでしょう。つまり単純にエネルギーロスになります。
高火力を目指すなら、なるべく多くの気化アルコールをジェットから噴出させるべきです。ということで作り直しです。
燃焼スピードを求めつつ、エネルギーロスを少なくする新工法
ざっくり言うと、このラクガキのようになります(笑)。
つまり、孔を開ける位置を上にしました。今までの「旧」位置では裏面にも穴が開いていました。「新」位置ではその心配はありません。ただ、缶の厚みのある部分を貫通させるので電動ルーターがおすすめです。
ネットで調べた情報によると、この裏に空いた穴の部分を耐熱接着剤で埋めるという方法があるみたいですが、それは正直面倒なので、穴の開ける位置を変えて解決しました。
こうして出来たパーフェクトなアルスト?
表面のジェット孔位置もかなり上になります。したがって、アウターパーツを折り返してインナーとの隙間を埋めようとするとジェット孔を塞いでしまいます。なので、ほぼ嵌め込み、縁を炙って、なめして、馴染ませて隙間埋めは終わりであります。それで案外うまいこと隙間はなくなることを知りました。今まで汚ならしく折りかえしていたのは何だったんだ…。
こちらが高さ40㎜、8炎孔タイプ。10ml燃焼タイムは4分30秒と燃費性能が改善。
8炎孔タイプを上から。渦は弱め、火柱が小さめなので径の小さいマグクッカー向き。
こちら高さ40㎜、16炎孔タイプ。10ml燃焼タイムは3分37秒。
16炎孔タイプを上から。炎の渦が8炎孔タイプより収束しています。火柱が高いので径の大きな浅型クッカー向き。
結論
- 高さは40㎜程度で、副室壁の折り目は浅めにして、気化アルコールの圧力を高めること。
- 気化アルコールの余剰が出ないよう、ジェット孔も十分な数を開けること。
- 気化アルコール漏れが無いよう構造を徹底すること
この手のアルコールストーブを高火力化するには、アルコールを如何に効率よく気化させるかを考える…ということに尽きると思います。
気化圧力を低下させないでジェットからよりたくさんのアルコールを噴出させれば高火力ストーブと言えるのではないでしょうか。
文系脳の僕にはこれくらいが限界でした~。
気化圧力を低下させないでジェットからよりたくさんのアルコールを噴出させれば高火力ストーブと言えるのではないでしょうか。
文系脳の僕にはこれくらいが限界でした~。
おわり
コメント
コメント一覧 (2)
コメントありがとうございます。
穴については、仰るとおりです。缶外側から下から斜め上に向かって、缶のふちの固いところを貫通するように開けています。