登山口でたまに見かける「クマ出没注意!何月何日、登山道付近でクマの目撃がありました!」という看板。しかしそう簡単に熊に遭遇するものだろうか?登ってみた結果…。
2023年7月中旬、僕は長野県上田市と東御市の境にある烏帽子岳(標高2,066m)へ行った。コースは上田市民の森から登るコースで、はっきり言ってマイナーコースだ。僕は何度か登ったことのあるコースだが、真夏のこの時期は初めてだ。登り始めの時刻は朝6時少し前。そして登山口入口には「クマ出没注意」の看板が。
この山域に熊の目撃例が多いことは知っていたが、僕の経験上「クマ出没注意」の看板があっても登山中に熊を目撃したことはなかった。熊だって好き好んでわざわざ登山道に出てくることなんて滅多にない。熊に出会うときは人間と熊共に余程運が悪い場合だろうと思っていたので、確率は相当低いと踏んでいた。
とはいえ、揺るぎない事実として熊は山に確実に生息している。そしてこのコースは入山者数が非常に少ないコースでもある。烏帽子に登る人は多いが、ほとんどの人は反対側の湯の丸高原側から入山するのだ。今日こそは山で熊に会うかもしれないと思いつつ、普段は滅多につけないモンベルの熊鈴を取り付ける。熊上等である。
歩き始めて1時間経つか経たない頃、登山道脇の藪がガサガサと大きな音を立てた。そのときはカモシカかシカか、何の動物かの判定はできなかったが、その音を立てた主は少し離れた木に登りその姿を遠目に見せてくれた。それは紛れもなく熊であった。「マジかwついに出やがった」
距離にして20mも無い。写真真ん中の木にしがみつく黒い物体が熊だ。木に登る姿は少し愛くるしい感じもしないでもないが、木肌に爪を立てる音はバキバキと凶悪な響きであり、全然可愛くはない。
ホモサピエンスにビビって木に逃げてくれたので「おー熊だ〜」と呑気こいて写真を撮ったりしていたが、その後木から降りようとしているそぶりを見せたので戻ってきたらやばいと思い、そそくさとその場から逃げる。
そうやってまたしばらく登っていると数十メートルほど先の細い木の枝ような植物が上下に揺れているように見えた。鳥も多いので鳥が飛び立ったあとだろうか。そんなことを思いながらさらに近づくと…。ガサガサッと音がして、ヤツは黒くて丸い後ろ姿を見せながら遠ざかっていった。また熊。本日二頭め。枝が揺れてたのは熊さんが揺らしてたのだ。
この時点でもちろん山でホモサピエンスには会っていない。会った大型哺乳類はツキノワグマのみである。しかも二頭。これはとんでもない山に入ってしまったぞと不安になるホモサピエンス一匹。熊に包囲されている気分になる。
そんなことを考えたりしながら、さらにビビりつつも山頂を目指した。正直引き返す方が熊に再会するリスクがある。幸いなことにもう熊さんには会わずに山頂に着くと、人がパラパラと湯の丸高原スキー場から登ってきており、この日山で初めてツキノワグマ以外の大型哺乳類(ヒト)に出会えた。
帰りは本当は湯の丸側に降りたいのだが、車を市民の森に停めているので当然また熊たちの森へ降りなくてはいけない。一度通ったから熊ももう引っ込んだだろうとは思うものの、やはり気分は重たい。熊鈴の音だけではセミと鳥の鳴き声に掻き消されている気がするので、スマホで音楽を鳴らしながら仕方なく降りる。
それも杞憂で、やはり時間的にも昼が近いせいなのか、やはり人が一度通ったからなのか、熊はもう現れなかった。ということで無事に下山できましたとさ。
登山口近辺の集落でそのような熊襲撃情報があるなら結構リスクがあると思う。そのような熊に対して人間はナイフ程度の武器を持っていようが、仮に拳銃を持ってようが勝てやしないだろう。極真空手の始祖、大山倍達曰く、「檻の中で人間と猫では人間は日本刀を持って初めて同等の戦力」だという。いわんや熊である。
心配なら熊スプレーを携行すべしといいたいが、これも相当接近しないと風で流されるため意味が無い。熊スプレーの間合い、それはまた熊の間合いでもあるのだ。そこで冷静に素早く引き金を引いて熊の顔に命中させるにはそれなりの訓練がいるだろう。熊スプレー携行のみで安心することなかれ。
とは言うものの実際に遭遇するとビビる。今回遭遇した熊は若いオスの単独個体なのかもしれない。しかし子連れに遭遇してしまうとこれは大変恐ろしい。子を持つ親なら不審者が近づいてきて逃げ場がない場合、目の前の敵を倒すしかないという母熊の気持ちはよくわかる。
熊目撃件数が多い山には当然子連れ熊もいるだろうし、遭遇リスクは高いと思われる。やはり熊出没注意の看板がある山は熊出没注意なのだ(当たり前)。
元も子もないことを言うようだが、山での熊対策の一番の方法は、結局のところ、事前に熊が出没するリスクの高い山(目撃例多数、入山者が極端に少ない)に行かないことに尽きると思う。人が少ない山は熊が出るのだ。
おわり
2023年8月1日
2024年5月29日更新
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山で熊に出会う確率はどれくらいなのか?
2023年7月中旬、僕は長野県上田市と東御市の境にある烏帽子岳(標高2,066m)へ行った。コースは上田市民の森から登るコースで、はっきり言ってマイナーコースだ。僕は何度か登ったことのあるコースだが、真夏のこの時期は初めてだ。登り始めの時刻は朝6時少し前。そして登山口入口には「クマ出没注意」の看板が。
この山域に熊の目撃例が多いことは知っていたが、僕の経験上「クマ出没注意」の看板があっても登山中に熊を目撃したことはなかった。熊だって好き好んでわざわざ登山道に出てくることなんて滅多にない。熊に出会うときは人間と熊共に余程運が悪い場合だろうと思っていたので、確率は相当低いと踏んでいた。
とはいえ、揺るぎない事実として熊は山に確実に生息している。そしてこのコースは入山者数が非常に少ないコースでもある。烏帽子に登る人は多いが、ほとんどの人は反対側の湯の丸高原側から入山するのだ。今日こそは山で熊に会うかもしれないと思いつつ、普段は滅多につけないモンベルの熊鈴を取り付ける。熊上等である。
ホモサピエンス、熊の縄張りへ…
登り始めると登山道の踏み跡は明瞭だが、とにかく蜘蛛の巣だらけなので本日の先行者はいないことは明白である。本日、僕が山に入るホモサピエンス第一号とあれば、熊も油断して登山道の近くにいるかもしれないぞ…なんだかんだ不安になってくる。歩き始めて1時間経つか経たない頃、登山道脇の藪がガサガサと大きな音を立てた。そのときはカモシカかシカか、何の動物かの判定はできなかったが、その音を立てた主は少し離れた木に登りその姿を遠目に見せてくれた。それは紛れもなく熊であった。「マジかwついに出やがった」
距離にして20mも無い。写真真ん中の木にしがみつく黒い物体が熊だ。木に登る姿は少し愛くるしい感じもしないでもないが、木肌に爪を立てる音はバキバキと凶悪な響きであり、全然可愛くはない。
ホモサピエンスにビビって木に逃げてくれたので「おー熊だ〜」と呑気こいて写真を撮ったりしていたが、その後木から降りようとしているそぶりを見せたので戻ってきたらやばいと思い、そそくさとその場から逃げる。
まさかの二頭目の熊!!
その先はビビりながら歩く。道は比較的まっすぐな尾根道で、つづら折りもないため熊に急に鉢合わせるような道ではないが、それでも気づかずに接近することは避けたかった。そのためには急な動きを避け、走ったりせずゆっくり前方や周りを注意しながら進むしかない。とにかくその辺の藪にいるであろう熊さんを驚かせてはいけない。そうやってまたしばらく登っていると数十メートルほど先の細い木の枝ような植物が上下に揺れているように見えた。鳥も多いので鳥が飛び立ったあとだろうか。そんなことを思いながらさらに近づくと…。ガサガサッと音がして、ヤツは黒くて丸い後ろ姿を見せながら遠ざかっていった。また熊。本日二頭め。枝が揺れてたのは熊さんが揺らしてたのだ。
この時点でもちろん山でホモサピエンスには会っていない。会った大型哺乳類はツキノワグマのみである。しかも二頭。これはとんでもない山に入ってしまったぞと不安になるホモサピエンス一匹。熊に包囲されている気分になる。
登頂…そして下山へ
登山者のイキりあるあるで、「全然人に合わなくて最高だったw」などと言って自分はミーハーな山域には行かずに人が少ない渋めの山に行ってますアピールしている人がいるが、ここでは僕のイキりのほうが上だろう。人どころか熊しかいないのだから。人が少ない山が好みの人はぜひ熊しかいない山に行くといい。思いっきりイキることができる。そんなことを考えたりしながら、さらにビビりつつも山頂を目指した。正直引き返す方が熊に再会するリスクがある。幸いなことにもう熊さんには会わずに山頂に着くと、人がパラパラと湯の丸高原スキー場から登ってきており、この日山で初めてツキノワグマ以外の大型哺乳類(ヒト)に出会えた。
帰りは本当は湯の丸側に降りたいのだが、車を市民の森に停めているので当然また熊たちの森へ降りなくてはいけない。一度通ったから熊ももう引っ込んだだろうとは思うものの、やはり気分は重たい。熊鈴の音だけではセミと鳥の鳴き声に掻き消されている気がするので、スマホで音楽を鳴らしながら仕方なく降りる。
それも杞憂で、やはり時間的にも昼が近いせいなのか、やはり人が一度通ったからなのか、熊はもう現れなかった。ということで無事に下山できましたとさ。
登山での熊対策=いかに遭遇を避けるか
僕はツキノワグマはそこまで恐れるに足らずと思っている(ヒグマは別格)。子連れはまた別だが、彼らは基本的に無闇に人間を攻撃することはない。人間に恐怖心を抱いている個体がほとんどだ。しかし人間の食糧の味を覚えて人に慣れた熊がいるようならヤバい。登山口近辺の集落でそのような熊襲撃情報があるなら結構リスクがあると思う。そのような熊に対して人間はナイフ程度の武器を持っていようが、仮に拳銃を持ってようが勝てやしないだろう。極真空手の始祖、大山倍達曰く、「檻の中で人間と猫では人間は日本刀を持って初めて同等の戦力」だという。いわんや熊である。
心配なら熊スプレーを携行すべしといいたいが、これも相当接近しないと風で流されるため意味が無い。熊スプレーの間合い、それはまた熊の間合いでもあるのだ。そこで冷静に素早く引き金を引いて熊の顔に命中させるにはそれなりの訓練がいるだろう。熊スプレー携行のみで安心することなかれ。
熊遭遇の確率を減らすには
熊は普通に山に生息している。変に刺激になければ向こうから気づいて逃げてくれることが多い。とは言うものの実際に遭遇するとビビる。今回遭遇した熊は若いオスの単独個体なのかもしれない。しかし子連れに遭遇してしまうとこれは大変恐ろしい。子を持つ親なら不審者が近づいてきて逃げ場がない場合、目の前の敵を倒すしかないという母熊の気持ちはよくわかる。
熊目撃件数が多い山には当然子連れ熊もいるだろうし、遭遇リスクは高いと思われる。やはり熊出没注意の看板がある山は熊出没注意なのだ(当たり前)。
元も子もないことを言うようだが、山での熊対策の一番の方法は、結局のところ、事前に熊が出没するリスクの高い山(目撃例多数、入山者が極端に少ない)に行かないことに尽きると思う。人が少ない山は熊が出るのだ。
おわり
2023年8月1日
2024年5月29日更新
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コメント
コメント一覧 (4)
○再会
指摘ありがとう〜
本記事のコースは国土地理院地形図に記載のある登山道です。