
スノーピークの特許取得済みカセットコンロとその模倣品について、知財の観点から状況を紐解いてみよう(推測が含まれれるので注意)。
スノーピークの特許取得済みカセットコンロストーブGS-600シリーズはCB缶ガスカードリッジを装着するスペースに燃焼部と五徳を回転させて収納することができ、コンパクトな筒状形態に変形させることができるコンロだ。キャンプはもちろん、コンパクトかつスタイリッシュな形に収まるので家庭でも使いやすいデザインになっているが、何といっても収納ギミックが男心をくすぐる。
こちらの製品に使用されている特許は、
特許6839739、出願日2019年8月30日
であり、現在も有効だ。特許の請求の範囲の詳細は省略するが、要約するとボンベ収納室に燃料誘導器と燃焼部と五徳が回転自在になることで収納可能にになっているという内容。

画像は特許庁JPlatpatから引用
実はこの製品、2026年3月20日に税込13,750円から税込7,800円に大幅値下げされている。模倣商品がAmazonで5,000円台で出てきたことによる対応と思われる。スノーピーク品もAmazonだとさらに値下げされて5,000円台になっているため、模倣品と特許品とで価格差がほとんどなくなってしまっているのだ。なぜせっかく特許を取得した製品なのに値下げしているのか。なぜ模倣品を抑え込めないのか、考察してみよう。

模倣品画像はAmazonより引用。
特許品と模倣品はよく似ていて、一見するとスノーピークの特許を侵害しているように見えるが、当該特許の請求項1をよく読むと以下の文章が確認できる。
前記カバー蓋を開放し前記遮熱板を避けるように前記燃料供給制御器を介して前記燃焼装置部を回動させることにより、
つまり、ボンベ収納部のカバー蓋はボンベ収納部の遮熱板部分の反対側に位置していて、そのカバー蓋が開くことで燃焼装着部(バーナーヘッドや五徳)がボンベ収納部の中に納まるという仕組みが特許になっているのだ。

特許というものは、一見するとほとんど同じでも請求項1の内容をちょっと外しておけば侵害にならない場合がある。今回の場合はまさにそうだ。
Amazonの模倣品の製品説明によるとボンベ収容部の遮熱板側がカバー蓋になっていて、そこが開くことで、燃焼部と五徳を収納するようになっている。

構造はかなり似ているが開く側が明確に違っていて、スノピの特許ではわざわざ「遮熱板を避けるように」と書いているが、模倣品は遮熱板を避けるどころかそこに向かって回転して遮熱板が開いて収納されるために特許を回避していると思われる。
しかしここであえて私が言いたいのは、スノピの特許は安全性まで考えているであろう特許であり、模倣品とは設計思想が全然違うだろうということだ。あくまで私の推測だが、スノーピークの設計ではおそらく遮熱板が安全に影響することを考慮し、遮熱板が開いた状態での使用を絶対に避けたいという意図が看て取れる。発明の効果として、明細書の0012にも以下の記載がある。
使用時に燃焼装置部(バーナー)が発する熱が遮熱板に遮られてボンベ装填室に装填されているカセットガスボンベの過加熱が確実に防止される安全性の高い装置構成を容易に設計実現可能となる一層実用性に優れた構成のカセットガスコンロ装置となる。
この遮熱板は常にボンベを隔ていて開閉しないから遮熱板として機能するわけであって、ここに安全のための設計思想があるのだ。つまり当たり前ではあるが、間違って遮熱板が機能しない状態で使用するリスクを設計によって消し込んでいる。
対して模倣品は設計で何も考えておらず、要するに遮熱板にあたる部分をカバー蓋にしてしまって開閉可能になっているから、遮熱機能が十分に発揮されないおそれがあり、事故が起こる可能性がある設計となっている。事故とは遮熱板が開いた状態で使用することでボンベが加熱されて爆発する事故だ。このようなリスクの想定はせず、当該特許を回避することしか考えていないのが明白だ。
だが悲しいかな、一般ユーザーにこの遮熱板が動かないことの安全性はなかなか理解されにくく、ただ「ボンベ収納部に燃焼部が収納されるーという点において二つは同じだ」と認識されてしまう。スノーピークの特許の有効性が伝わりにくい状況になってしまっている。結果としてスノーピークも市場において価格を下げざるを得ないという苦肉の戦略に出たわけだが、以上述べてきたようにスノピは安全性を考慮した構造を持ち、模倣品はそれが無いことを考えると、価格差がないのであればスノピを買うべきなのは自明だ。
しかしそれにしてもスノーピークはなぜ請求項1に設計事項である「遮熱板を避けるようにカバー蓋が開閉する」という内容を書いてしまったのだろうか。どちら側が開閉するのか特定しなければ権利範囲を広くできたものを…。遮熱板については従属項にかけばよかったものを…。石橋を叩いての請求項1の内容のように見え、それ故の拒絶理由通知なしでの一発査定はさすがだが、もう少し大胆にいけたのではないかと思ってしまう。
何にせよ、せっかく特許を取ったが潔く値下げして模倣品に徹底抗戦するという、スノーピークの意地と努力はすごい。


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