僕が登山用の分離型のシングルバーナー(ガスストーブ)を使ってきた経験に基づき、分離型バーナーの選び方について書いてみます。
なんやかんや紹介しましたが、僕のオススメはEPIgasのAPSA-Ⅲストーブですね。APSA は「アルパイン・ストーブ・オート」の略らしいです。EPIが昔から出しているモデルです。
分離型バーナーとは
いわゆるアウトドア用のガスストーブには二種類あります。
カートリッジ(ガス缶、OD缶、ダルマ缶など呼び名は様々)に直結してバーナー(ストーブ)を取り付けるタイプは「直結型」と呼ばれています。
カートリッジとの取り付け部分がホースを介することでバーナーヘッドと離れているバーナーを「分離型」と世間では呼ぶことが多いです。
そもそも分離型バーナーはどんなときに必要か
僕が分離型バーナーが必要だと感じるシチュエーションは大きく分けて二つあります。
一つ目はパーティ(複数人数)で登山をするとき、特に、雪山にパーティ登山で登るときに便利です。
二つ目は、僕は経験が少ないですが、キャンプのときだと思っています。
複数の人員で行く登山で分離型バーナーが必要だなと思う理由は、単純に調理量が増えるため、大きな鍋を使うからです。分離型バーナーは直結型のバーナーより重心が低く、安定して調理が出来ます。さらに雪山では雪から水を作ることもあるため、大きな鍋での水作りのためにも必要になります。
大人数で重心が高い直結型バーナーを使用していると誰かが鍋にあたってしまい、せっかくの料理をこぼしてしまうことも有り得ます。というか、僕も幾度か経験しています。それはとても残念なことですし、色んな意味で消耗します。ただでさえ疲れている登山の最中で、調理くらいリラックスして行いたいですよね。
分離型バーナーは登山のみならず、大人数のキャンプでも活躍します。これは説明がいらないとは思いますが、パーティ登山と同様、大人数なら大鍋を使うシチュエーションもあり、調理が楽です。鉄板をのせて焼肉なんかも出来るでしょう。
分離型バーナーのここがスゴい!
EPI SPLITストーブ
分離型バーナーの良い点は、なんといっても安定感の良さです。重心が低いため、鍋が転倒するリスクが低くなります。これは全ての分離型バーナーに言えることでしょう。
また、直結型のシングルバーナーと違い、炎の下にガス缶が無いため、炎からの輻射熱が缶に伝わらないという特徴があります。
一般的にガス缶本体に過剰な熱が加わると缶が爆発しますので、各メーカーは輻射熱で缶が熱されることを危険としていますが、分離型に関してはこの限りではありません。
缶が熱されることなく安心して鉄板料理やフライパン料理が出来ます。特に夏場のキャンプではこれは大きなメリットだと思います。
ただし輻射熱で地面が熱くなることはあるので、植生の上に直に使うときはバーナーシートを使うなどして配慮しましょう。
分離型バーナーのここがダメ!
直結型のバーナーと比べると
- 重い
- かさばる
- ホースが長い分、使用時にスペースを使う
などなど、デメリットもたくさんあります。しかし、先にあげたメリットとデメリットを天秤にかけ、それぞれのシチュエーションに合わせて考えた上で使ってみてはいかがでしょうか。
したがって、僕の場合は、夏や冬の単独山行では直結型バーナー、冬のパーティー登山は分離型バーナーを使用しております。僕の場合、パーティ登山の際の団体装備についてはシビアな軽量化はあまり意味の無いことだと思っていますので、使いやすさ、リスクの少なさ第一で装備を選んでいます。
分離型のシングルバーナーを選ぶ基準
それでは世の中に数ある分離型バーナーのなかでどのようなものを選べば良いのでしょうか。
まず、燃料の種類ですが、ガスと液体燃料があります。液体燃料についてですが、僕は液体燃料用のバーナーは持っておりませんのでとやかく言えませんが、聞く限りでは液体燃料は寒さに強い半面、メンテナンス性や、使い勝手が悪いとよく言われています。
もちろん寒さに強いという信頼はありますが、ガスでも寒さに強い配合の製品も出ておりますので、僕はガスをおすすめします。
次は安定感が良いものを選びましょう。なるべく重心が低いものがおすすめです。これは実際にお店で展示品を見てみると納得が行くと思います。
最後に着火(点火)のしやすさです。実は僕にとってはこれが結構重要で、直結型のバーナーと異なり、地面と鍋との距離が近い分離型バーナーは、バーナーヘッドの下に指やライターを突っ込んで点火するのが非常に面倒なのです。面倒というか、火傷のリスクすらあります。
だから僕は手元で点火できるタイプ、すなわち点火スイッチが炎からの離れたところにあるモデルをおすすめします。これはとっても便利です。
僕のおすすめの分離型バーナーは…
幾つか有名どころを紹介していきましょう。
プリムス ウルトラスパイダーストーブ
プリムスのウルトラ・スパイダーストーブは数年前に使っていました。
僕が使っていたモデルはイグナイター(点火装置)がバルブ側のホースについており、使いやすかったのですが、いかんせん繊細すぎる作りで、いつしか取れてしまいました…。結局毎回ライターで点火するはめになってしまいました。おそらくイグナイターがもげる事例が多発したのか、後継モデルではイグナイターが除去されています(笑)。
あと、全体的に計量でコンパクトなのはとても素晴らしいのですが、少しホースが短いのと、本体が軽すぎるので安定感にやや難ありです。
EPI SPLIT ストーブ
このモデルの大きな特徴はゴトクがチタン製でボディのサイズのわりに軽量なことと、脚の高さを調整することができるところでしょうか。足の高さ調整については、実際使ってみるとあまり大きな段差には対応していないですが、微々たる傾きなら水平を取ることが出来るでしょう。
ゴトクはやや不安定な感じがしますが、それを補うようにゴトクにリングを付けて安定感を増せます。
ちなみにイグナイターは炎の真下に入っているため、点火しにくいのも難点です。
SOTO ストームブレイカー
SOTOのストームブレイカーは液体燃料とガス燃料を両方使える画期的なマルチフューエルストーブです。残念ながら僕は使ったことはありませんが、今年(2018年)一番の注目モデルです。
ガス缶を逆さまに取り付けることで「液出し」仕様となっています。「液出し」とは、かぎりなく液化状態に近いガスを燃焼させることをいいます。ガス缶の中には液体と気体のガスが入っています。通常は気体になったガスから順に外に噴出しますが、逆さまにするとガス缶内での気化を待たずして強制的にガスを缶の外に噴出されることが可能になるのです。ようするに外気温度に左右されずに気化できるわけで、寒さに強いってことです。
で、液体燃料(ガソリン、ホワイトガソリン)も使えることでさらに寒さに強く汎用性を高めています。
そしてスリ鉢状のゴトクで風にも強く、まさに風が吹く極寒の地の野外で調理をしたい人にはこれしかないというアイテムです。しかも分離型にしては軽量コンパクト。
でもイグナイターは付いてないし、僕はここまでの過酷な山行や冒険はしないのでオーバースペックかなと思いますね…。値段もお高いですし…。
あと、ガスを逆さにして強制的に気化させるとガス消費が早くなるんじゃないかと心配です。
EPI APSA-Ⅲストーブ
なんやかんや紹介しましたが、僕のオススメはEPIgasのAPSA-Ⅲストーブですね。APSA は「アルパイン・ストーブ・オート」の略らしいです。EPIが昔から出しているモデルです。
まず、安定感と利便性重視でコンパクト性と重量は二の次です(笑)。とにかく低重心ですので信頼感はかなりあります。
ホースも長いので500gの缶(大きい缶)も使えます。
最高出力4,000kcalと火力も高いので雪を溶かして水を作るのもお手のもの。
手元の調節バルブの側に点火装置のスイッチが付いてますので楽々点火。山では燃料の節約も重要ですので、一回沸騰したら火を止める、冷めてきたらもう一度点火なんてことはよくあります。このときに鍋の下に手を突っ込んで点火なんてしなくていいのが助かります。
正直言って見た目は単純すぎるほどのつくりですが、その分、タフに使っても壊れないのです。
学校山岳部や社会人山岳会ではお馴染みのモデルでもあります。
ガスカートリッジ接続部に点火スイッチとでかいつまみがあります。
2019年4月9日追記:SOTO レギュレーターストーブ フュージョン
新富士バーナーから2019年春に新たな分離型ストーブが発売されました。
こちらはカセットボンベ缶(CB缶)専用なのですが、手元に点火放置を備えています。またマイクロレギュレーター搭載なのでCB缶の弱点である低温時の火力低下もフォローしています。(もっとも、マイクロレギュレーターは低温時にガスが多く出すことで火力低下を防ぐ仕様なので、ガス燃費は気になりますが)
このコンパクトさで手元点火は優秀だと思いますし、夏場やキャンプなどカセットボンベ缶しか使わないと割りきっていれば、かなり良いと思いました。
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